【映画レビュー】ツリー・オブ・ライフ / The Tree of Life
太古の昔、宇宙の始まりから連綿と続く、いのちの営みを、美しい映像で描き出した唯一無二の映画『ツリー・オブ・ライフ』。
ブラッド・ピットとショーン・ペンという二大俳優が出演している本作ですが、この作品は俳優の演技を見るというよりも、映画の中にあるすべてを“体感する”のが、正しい見方のように思います。
さすがテレンス・マリック監督、自然の美しさ、生命の強さ、一筋縄では行かない感じを、美しい映像に切り取って、私たちに感じさせてくれています。
STORY
オブライエン家には三人の息子がいた。父親は息子たちを愛していたが、音楽家になることを挫折した自分の轍を踏まぬよう、将来の成功のため、彼らを厳しくしつけていた。11歳になった長男のジャックは、そんな父親に反発し、不器用に反抗を試みる。彼らにとって、父親が出張に出ている時は、優しい母親と過ごせる平穏な日々だった…。大人になり、ビジネスマンとしても成功したジャックは、両親や弟たちと過ごした田舎町を訪れ、昔を振り返る。
解説
テレンス・マリック監督が、第64回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した本作。
物語は成長したジャック(ショーン・ペン)が、自らの幼少時代を思い出す形で進んで行きます。
ジャックの父親、オブライエン氏を演じるのは、ブラッド・ピット。
ジャックを支配しようとする、強権的な父親を演じています。
しかし、この映画は、その家族の歴史だけを描くものではありません。
宇宙の片隅で、太陽の影響で地球が発達し、水、空気、火などが現れ、植物が育つようになり、地球に生命が生まれ、様々な種が発生し、やがて人間が生活を始めるようになるまでを、138分の映像の中に凝縮しているのです。
生命が生きて行く中で繰り返してきた、あまたの歴史…。
古い生命は新しい生命を支配しようとし、新しい生命はその支配に反発し、やがて新しい生命が古い生命を凌駕していく模様を、テレンス・マリックは、一つのアメリカ人家族に託して描き出してくれました。
成長し、成功したジャックはとても人工的で、つるつるピカピカした、最新の技術が集まった家に暮らしています。
ジャックは、この物語で言うと、最も新しい生命に相当します。
新しい生命が住む家は、古くから続く自然を否定し、人間が作り出した技術の粋を集めたものということになるのです。
しかし、そんな家に暮らすジャックは、だんだんと、幼い頃の両親や兄弟たちとの思い出を懐かしむようになります。
これも、古くから生命が繰り返した歴史の一端なのかもしれません。。。
さて、この作品の中で映し出されている映像には、ほぼ(一部例外あり)CGが使われておらず、その多くがカメラによって撮影された映像だそうです。
物語の途中で、さまざまに映し出される自然の多様性、美しさには、思わず息を飲むほど。
こんな美しい映像の数々を私たちに見せてくれたテレンス・マリック監督には、感謝したくなります。
こんな映像を、2時間も堪能できるというだけで、この作品を観る価値はあるのではないかと思います。
最後に…。
この作品の中には、何度も「ヨブ記」からの引用があります。
私は、なぜか「ヨブ記」の解釈書は読んだことがあるのですが、「ヨブ記」自体は未読です。
この「ヨブ記」からの引用は、いろいろな映画や海外小説に頻出するので、やっぱり一度きちんと読んでおく必要はあるかもしれないなぁ。
別コラム
作品情報
『ツリー・オブ・ライフ』(138分/アメリカ/2011年)
原題:The Tree of Life
公開:2011年8月12日
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
劇場:丸の内ルーブルほか全国にて
監督・脚本:テレンス・マリック
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ブラッド・ピット/ショーン・ペン/ジェシカ・チャスティン/カリ・マチェット/ジョアンナ・ゴーイング/キンバリー・ウェイレン/ジャクソン・ハースト/フィオナ・ショウ/クリスタル・マンテコン
公式HP:http://disney-studio.jp/movies/tree-life/
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