【映画レビュー】座頭市 THE LAST
SMAPの香取慎吾があの座頭市を演じた映画『座頭市 THE LAST』。
勝新太郎の名作がどんなふうになるのか、恐る恐る観に行ったのですが、これがどうして、なかなかの出来!
阪本順治監督の凝りに凝った演出も冴えわたっているし、カメラさん、音声さん、みんなが素晴らしい仕事をしています。
偉大なる先達に正面から立ち向かい、各人が己のベストを尽くした結果が、この作品なのだと思います。
昨今、座頭市リメイクの映画がいくつか製作されていますが、北野武座頭市よりも、香取座頭市の方が、若さとか迫力の面では似合っているし、映画の出来としてもこちらの方が上ではないでしょうか(綾瀬はるか座頭市は未見)。
<STORY>
ヤクザ者に追われる座頭の市は、妻のタネに「これが最後だから」と約束して戦いに臨む。しかし、市をかばったタネは、虎治という男に刺し殺されてしまった。絶望した市は、故郷に帰り、百姓として生きようと決意する。かつての親友・柳司の家に世話になりながら働く市は、村が天道一家というヤクザ者牛耳られていることに気付いた。天道一家の度重なる非道に耐えかね、村人たちは立ち上がる。市はそんな彼らを手伝おうとするが…。
<解説>
映画の冒頭から、阪本順司監督の演出は冴えわたります。
ヤクザ者に追われて逃げる市、市の妻となることを約束するタネ。
ストーリーの展開は最初よくわかりませんが、その美しい映像とクリアーな音に引き込まれます。
冒頭のシークエンスを観ているだけで、監督の並々ならぬ意欲が感じられます。
あの勝新の名作をリメイク、しかも主演はジャニーズタレント。
それだけでも、映画通がこの映画を見る目は相当厳しくなりそうなもの。
機会あれば批判しようと待ち受けていることでしょう。
その批判をはねのけようと、スタッフ・キャストが力を合わせて最高の仕事をしているように思いました。
特に、うす曇りの太陽を背にした雪原での闘いのシーンの美しさや、天道一家での座敷から庭、塀を越えて外の道へと続いて行く計算され尽くしたカメラの動きなど、正しくプロの仕事だなあと感心してしまいます。
主演の香取慎吾も、勝新の座頭市にあったような“おかしみ”や“軽さ”をうまく表現していて、なかなかハマり役のように思います。
考えてみれば、1962年の『座頭市物語』第一作目が製作された時、勝新太郎は31歳。現在32歳の香取慎吾とそんなに変わらないのですね。
殺陣に関しても、勝新と比べてしまうとそれは物足りない部分もありますが、それなりのクオリティは維持しているかと。
そして、特筆すべきは敵役の仲代達也の存在感の凄さ。
なんて言うんでしょう…。なんか、そこにいるだけで圧倒される感じ。
人間なんだけど、人間じゃない、みたいな。
他の俳優陣が、どうしても“時代劇を頑張って演じている”という雰囲気を漂わせる中、彼だけは“自然にそこにいる”という感じなのです。
こんなすごい人と共演できるだけで、他の若手俳優さんには素晴らしい刺激になったのではないかと思います。
そういう意味でも、この映画は偉大なる先達に若手映画人が全力で立ち向かっている映画なのでしょう。
あ、そうそう、題字にも注目です!
『座頭市 THE LAST』(132分/日本/2010年)
公開:2010年5月29日
配給:東宝
劇場:全国にて
監督:阪本順治
出演:香取慎吾/石原さとみ/反町隆史/倍賞千恵子/加藤清史郎/高岡蒼甫/工藤夕貴/中村勘三郎/岩城滉一/仲代達矢
公式HP:http://www.the-last-1.jp/
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