【映画レビュー】たたら侍
戦国時代末期の出雲を舞台にした映画『たたら侍』。
本格的な村のオープンセットを島根県奥出雲地方に作ったり、たたら吹きの様子を再現したり、当時の木造船を実物大に復元したりなど、本当にお金がかかっていることを感じられます。
EXILE HIROが初めて映画のプロデュースを手がけているこの作品。
HIROって本当にお金を集めるのがうまいのね…と、変な実感を抱いてしまいました。
<STORY>
戦国時代末期、奥出雲のたたら村には、千年錆びないという“玉鋼”を生み出すすぐれた鋼の製造技術が古くから伝えられていた。たたら吹きたちをまとめる村下(むらげ)の息子に生まれた伍介は、力を得たい、村を出てみたいと強く願っていた。“玉鋼”を狙うよそ者に兄のように慕っていた平次郎が殺され、伍介は村を出ることを決意する。近江の国の商人の与平の力を借りてある足軽部隊に潜り込んだ伍介だが、戦に出会い逃げ出してしまう…。
<解説>
出雲の山里で、すぐれた鋼の製造技術をもつたたら村で、たたら吹きたちをまとめる村下(むらげ)の息子に生まれた青年・伍介を主人公とする本作。
伍介は伝統を守り村のたたら吹きなどを率いていくべき存在でありながら、閉ざされた村の外に出て、武士として生きていきたいと考えています。
言ってみれば、戦国時代の若者を、現代的な視点から描いた一作とも言えます。
それにしてもこの伍介、なんと言っても終始一貫していい加減。
「武士になりたい!」と自身の責任や婚約者、自分を慕う村の人たちを置いて出ていき、浅はかにも村の貴重な玉鋼を狙う商人を頼っていきます。
そのうえ、その商人に紹介された足軽部隊では飯炊きを担当させられては不貞腐れ、そのくせ戦闘が始まった途端、腰を抜かして逃げ出す始末。
這う這うの体で村に逃げ帰り、村の強化を口実に、村の鋼を狙う商人たちを村に引き入れてしまいます。
そして、鉄砲の製造に反対する村の重鎮たちを押し切って、鉄砲を村に導入しようとしたり…。
なんだか、新しいことをやろうとしては逃げたり挫折したり、思慮不足のためにさんざんな目にあったりしてしまう主人公なのです。
見た目も、着物の前をだらしなくはだけ、勾玉のチョーカーなんかしちゃったりして、なんかチャラいし…。
鑑賞後、「うーん、あの主人公、なんだったの? モラトリアムの時代に生きる現代の若者のメタファー?」と、ついつい考え込んでしまったのでした。。。
出雲阿国も、なぜに…。
でも、冒頭でも述べたように、再現されたたたら吹きの映像や、再建されたオープンセット、山深い奥出雲の神秘的な映像や、戦国時代の大型木造船などは、本当に見応えたっぷりです。
出雲出身で、自身で原作、脚本、監督を務めた錦織良成にとっては、やりたいことをかなりの割合で実現できて、良かったのかもしれませんね。
仲間にすべきは、敏腕プロデューサーということでしょうか。脚本や演出をもっとブラッシュアップしてくれるブレインやアドバイザーがいれば、もっと良かったのかもしれませんが。。。
『たたら侍』(125分/日本/2016年)
公開:2017年5月20日
配給:LDH PICTURES
劇場:新宿バルト9、TOHOシネマズ新宿ほか全国にて
製作国:日本(2016)
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
監督・原作・脚本:錦織良成
撮影:佐光朗
照明:吉角荘介
録音:西岡正己
美術監督:池谷仙克
編集:日下部元孝
主題歌:EXILE ATSUSHI「天音」
出演:青柳翔/小林直己/田畑智子/宮崎美子/豊原功補/笹野高史/石井杏奈/甲本雅裕/AKIRA/奈良岡朋子/津川雅彦/山本圭/高橋長英/品川徹/早乙女太一/でんでん/氏家恵/橋爪遼/菅田俊/音尾琢真/中村嘉葎雄/佐野史郎
Official Website:https://tatara-samurai.jp/
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