テイク・シェルター / Take Shelter
第64回カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを獲得したことでも話題の映画『テイク・シェルター』。
今日本では“放射脳”などと言う言葉が話題になっています。
襲い来る大きな危険から、家族を守りたいと、エキセントリックな行動に走ってしまう人たちが話題ですが、本作の主人公・カーティスは、それと少し似た状態にあります。
言わば“ハリケーン脳”とでも言う感じ。
「家族を守りたい」という気持ちは昔と変わらなくても、大いなる敵の正体がはっきりせず、自分の中のモヤモヤした不安と戦わなければいけない時代…。しんどいですね。
塚本晋也監督の新作映画『KOTOKO』も、同じようなものを感じました。
日本だけでなく、世界的に同じような感覚が広まっているのかもしれません。
<STORY>
ある日、カーティスは悪夢を見た。巨大な竜巻が町を襲い、オイルのような黄色い雨が降り始めるのだ。その夢は毎日のように続き、やがて異様さを増していく。カーティスは愛する妻・サマンサと、耳の不自由な娘・ハンナを天災から守ろうと、家の近くにあるシェルターを増強していく。仕事にも身が入らなくなり、職場の建設機材を持ち出したことが会社にばれ、カーティスは解雇されてしまう。それでも彼は、シェルターを作り続け…。
<Cheeseの解説>
この作品の主人公・カーティスは、異常な嵐に襲われて、人心が荒廃していく夢を、連日見るようになります。
異常な竜巻が襲ってきて、オイルのような黄色い雨が降り始め、飼い犬に襲われ、荒れ狂う鳥は空を被い、人びとが自分と娘を襲ってくる…。
そんな異常な夢を見続けた彼は、やがて来る天災に備え、庭にシェルターを作り始めます。
仕事にも身が入らず、憑かれたようにシェルター作りに熱中するカーティスの姿は、傍から見るとかなり異様なものでした。
仕事もクビになり、兄弟からもおかしな目で見られ、妻も彼を恐れるようになります。
しかし、カーティス自身も、自分がおかしいのではないかと疑いながらも、“シェルターを作らねばならない”という自分の情熱を止めることができません。
実は、カーティスの母親は妄想型統合失調症を患い、その後25年間も精神病院に入院していたのです。
カーテウィスは、自分自身もその病気を発症させたのではないかと疑いつつも、信念に従ってシェルターを作り続けるのです。。。
現代を覆う“不確かな不安感”。
こういう時代の空気は、弱い者、敏感な者に強い影響を与えます。
カーティスは、預言者なのか、ただの失調症により妄想を見ているだけなのか…。
人びとの感じている不安感は何なのか、ただの心配性なのか、妄想なのか、来るべき未来を見据えた預言なのか…。
現代、特に現代日本に生きる人びとには、自分がカーティスの立場だったらどうなるか、自分がカーティスの妻・サマンサの立場だったらどうするか、身近に感じてしまう映画と言えるでしょう。
『テイク・シェルター』(120分/アメリカ/2011年)
原題:Take Shelter
公開:2012年3月24日
配給:プレシディオ
劇場:新宿バルト9ほか全国にて
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:マイケル・シャノン/ジェシカ・チャステイン/シェー・ウィガム/ケイティ・ミクソン/キャシー・ベイカー/レイ・マッキノン/リサ・ゲイ・ハミルトン/ロバート・ロングストリート/トーヴァ・スチュワート
公式HP:http://www.take-shelter-movie.com/
Milan (2012-02-02)
売り上げランキング: 83030
売り上げランキング: 799
(C) 2011 GROVE HILL PRODUCTIONS LLC All Rights Reserved.