【映画レビュー】ワン・プラス・ワン / One Plus One
ザ・ローリング・ストーンズによる「悪魔を憐れむ歌」(Sympathy For The Devil)のレコーディング風景をジャン=リュック・ゴダールがフィルムに収めた1968年のドキュメンタリー映画『ワン・プラス・ワン』。
ゴダールとローリング・ストーンズ……。親和性がまったくなさそうな印象の両者ですが、作品を観るとその世界観は不思議なほどマッチしています。
というよりも、1968年というあの時代を、二組の天才クリエイターがそれぞれの感性でとらえ、出来上がった作品が「悪魔を憐れむ歌」であり、『ワン・プラス・ワン』である、ということなのかもしれません。
STORY
1968年、ローリングストーンズのミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ビル・ワイマン、チャーリー・ワッツらはロンドンでアルバム「ベガーズ・バンケット」の一曲「悪魔を憐れむ歌(Sympathy for the Devil)」をレコーディングしていた。中には、1969年に死去したブライアン・ジョーンズの姿も見える。カメラはそのリハーサルからレコーディングまで、そして1968年の激しく揺れ動く社会情勢とさまざまな革命勢力を映しとっていく……。
解説
2021年8月24日、ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが逝去しました。
その追悼上映として劇場で上映された映画『ワン・プラス・ワン』。
この上映で、スクリーンでこの作品を鑑賞することができました。
スクリーンに映し出されるのは、いわゆる「ドキュメンタリー映画」と聞いて思い出すのとはまったく違うものです。
ローリング・ストーンズについてや、そのメンバーについて、その関係性などの説明などはまったくなく、ただカメラはリハーサル室らしきところで曲のアレンジを作り上げていくストーンズの風景を映し出します。
さらに挿入されるのは、ブラックパンサー党の闘士たちによるエルドリッジ・クリーヴァーの著書「氷の上の魂」の朗読といったブラック・パワー・ムーブメントや、アドルフ・ヒトラーの「我が闘争」を読み人々をアジテーションする書店店主。
革命のヒロインであるアンヌ・ヴィアゼムスキーが森の中でインタビューを受ける様子、など。。。
ドキュメンタリー映画というより、まさにゴダールらしい映像詩となっています。
1968年というと、ベトナム戦争の最中であり、中国では毛沢東による文化大革命が行われていた頃。
アメリカでは4月にはマーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師が暗殺され、フランスではパリ5月革命があり、プラハの春があり、日本でも全共闘など、学生運動が盛んに行われており……。
1968年は、現在から考えると、驚くほどに世界各地で革命や運動の火が燻っていた時代なのかもしれません。
この1968年という時代に、映画の天才、そして音楽の天才たちが時代をとらえた映画『ワン・プラス・ワン』。
時代の貴重な記録として、見応えのある作品でした。
作品情報
『ワン・プラス・ワン』(100分/イギリス/1968年)
原題:One Plus One
米題:Sympathy for the Devil
公開:2021年12月3日
配給:ロングライド
劇場:新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
製作:マイケル・ピアソン
製作・出演:イェーン・クォーリア
音楽:アーサー・ブラッドバーン/デリック・ボール
出演:ミック・ジャガー/ブライアン・ジョーンズ/キース・リチャーズ/チャーリー・ワッツ/ビル・ワイマン/アンヌ・ヴィアゼムスキー/フランキー・ダイモン/ダニー・ダニエルス
Official Website:https://longride.jp/oneplusone/
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