イヴ・サンローラン / Yves Saint Laurent – Pierre Berge, L’Amour Fou
私はモンドリアンが大好き。
いずれ広い部屋に住めるようになった時には、モンドリアンの絵(のレプリカ)を飾りたいと思っています。
でも、モンドリアンを好きになったきっかけは、イヴ・サンローランのモンドリアン・ドレスです。
本来ならば、絵を知って、その後、その絵をモチーフにしたドレスを知るのが正しいのだと思いますが、私と同じように、イヴ・サンローランからモンドリアンや、その他のモチーフを知ったという方も多いのではないでしょうか。
このモンドリアン・ドレスやサファリ・ルックを生み出し、プレタポルテを広めたフランスを代表するデザイナー、イヴ・サンローラン 。
映画『イヴ・サンローラン』は、彼をもっとも理解し、愛していたパートナー、ピエール・ベルジェ氏の深い愛と喪失感が伝わってくる、静謐で美しい作品です。
人生のうち、50年を一緒に過ごした最愛の人がいなくなった哀しみを抱きながら、二人で重ねてきた多くの思い出を語るベルジュ氏の姿からは、イヴへの強い想いが感じられました。
<STORY>
1957年、クリスチャン・ディオールの急死により、急きょディオールのメイン・デザイナーとして抜擢された21歳の青年、イヴ・サンローラン。華々しくデビューした彼は見事成功を治め、以来フランスのモードをリードし続けてきた。しかし、2002年に引退した彼は、2008年に死去。1958年に出会って以来、公私ともにイヴを支えてきたパートナー、ピエール・ベルジェは、イヴと二人で蒐集した美術品をオークションにかけることを決める。
<Cheeseの解説>
このドキュメンタリー『イヴ・サンローラン』は、イヴ・サンローランの長年のパートナー、ピエール・ベルジェ氏が、彼の想い出や軌跡を語るインタビュー映像と、多くの記録写真、そしてピエール・ベルジェ氏とイヴ・サンローランが蒐集した美術品をオークションにかけるまでの記録から構成されています。
イヴ・サンローランが経験してきた、華々しいデビューから挫折、不死鳥のような再起、そしてトップに立ち続け、新しいものを生み出し続けなければならないという苦悩。
それをすぐそばで見守ってきたベルジェ氏の言葉からは、イヴへの大きな愛情と少しの憎悪、そして彼のタレントへの嫉妬などの、複雑な感情が感じられます。
彼の心には、自分が決して追いつけない、天性の才能の持ち主への劣等感と、自分なしではやっていけないであろう彼への優越感という、相反する感情があったのではないでしょうか。
でも、このドキュメンタリーからは、そんな負の感情以上に、イヴへの大きな愛情が感じられました。
それは、何よりも、ベルジェ氏が撮影したと思われる、イヴ・サンローランの数多くのプライベート・ショットから感じられます。
笑顔のイヴ、苦悩するイヴ、はにかむイヴ、心ここにあらずといったイヴ…。
心を許した人間にしか見せないであろう表情が、たくさん映し出されています。
撮影しているベルジェ氏との信頼関係や愛情関係があったからこそ、これらの貴重な写真が撮影できたのだと思います。
観客は、この1本のドキュメンタリーを観ている間に、1960年代から2000年代までのモードの変遷を知り、イヴが切り開いてきた時代の空気を味わい、天才の苦悩を知り、美しい数々の美術品に触れ、人間同士の深い愛をみることができます。
アートとモードの中で苦悩しながら生きてきた人間たちの生の記録は、とても見応えのあるもの。
ファッションに興味がない人にも、ぜひ観て欲しい一作です。
『イヴ・サンローラン』(103分/フランス/2010年)
原題:Yves Saint Laurent – Pierre Berge, L’Amour Fou
公開:2011年4月23日
配給:ファントム・フィルム
劇場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて
監督:ピエール・トレトン
出演:イヴ・サンローラン /ピエール・ベルジェ
公式HP:http://www.ysl-movie.com/
売り上げランキング: 1609
日之出出版
売り上げランキング: 634813
売り上げランキング: 25019
売り上げランキング: 763