【映画レビュー】ノルウェイの森
正直、観ている時は「あんまり面白くない…」と思ったのです。
でも、家に帰っていろいろ思い返している内に、どんどん素晴らしい作品だと思えてきました。
愛する人を失った人間と、愛する人を支えられない人間が抱く、喪失感と絶望感を描いた映画『ノルウェイの森』。
1960年代という“まだ何も失っていない”時代の中で、自分だけが大切なものを失ってしまった人間の哀しみが、この作品にはあふれていたように思います。
STORY
高校生の時に親友のキズキを自殺で失ったワタナベ。東京の大学に進学したワタナベは、キズキの幼なじみで恋人だった少女・直子と出会う。しばらくはただ会って東京の街を散歩するだけだったワタナベと直子だが、直子の20歳の誕生日に一夜を共にする。その後、直子はワタナベの前から姿を消し、やがて京都の療養所に入院してしまう。その頃、ワタナベは不思議な魅力を持つ少女・緑と出会う。ワタナベは直子に会いに行きつつも、東京では緑と会い、他愛もない会話を続けていた…。
解説
この映画は、作家・村上春樹のベストセラー小説を映画化したもの。
1960年代後半を舞台に、主人公・ワタナベと、恋人の直子、不思議な魅力を持つ少女・緑の物語を描いています。
1960年代後半。大学では学生運動が行なわれ、授業も中断されたりしていました。
学生たちが「自分たちには力がある」と信じ、自らの拳を振り上げていた時代です。
時代は、まだ何も喪失していないのです。
そんな時代に、直子は幼い頃からずっと一緒にいた幼なじみで恋人のキズキを失います。
その“喪失”は、自分の半身を失ったようなものでしょう。
親友を失ったワタナベにも喪失感はあるでしょうが、直子の喪失感とは比べ物にならないはず。
そんな喪失感に打ちのめされ、精神のバランスを失った直子を支えるなんて、たかだか18歳の男子大学生には、どだい無理な話。
キズキと直子の二人が身近にいたせいで、時代の流れより一足早く、大きな喪失を味わわなければならなかったワタナベは少しかわいそうですが、失ったものが大きいからこそ、見える世界が広がったということもあるのでしょう。
それにしても、日本を舞台にした日本の物語に、ベトナム系フランス人であるトラン・アン・ユン監督を起用しするという賭けは、大きな成功だったのではないかと思います。
日本人ではない彼が監督することにより、1960年代後半の時代の空気を思いこみや偏見なく写し取り、あの村上春樹小説独特の会話のやり取りを、きちんと再現することができたのではないでしょうか。
あ、でも、個人的にちょっと残念だったことがひとつ。
小説「ノルウェイの森」を読んでいて、「レイコさんはシワシワだ」というようなワタナベの表現が何度も出て来たのが、ものすごーく印象深かったのです、私には。
でも、レイコさんを演じた霧島れいかさんは、シワひとつない美しい女性でした。。。
いや、どれだけシワシワな女優さんが出てくるのかなと思っていたのでね。
ちょっと予想外だったのです。。。
別コラム
作品紹介
『ノルウェイの森』(133分/日本/2010年)
英題:NORWEGIAN WOOD
公開:2010年12月11日
配給:東宝
劇場:全国東宝系にて
原作:村上春樹
監督・脚本:トラン・アン・ユン
出演:松山ケンイチ/菊地凛子/水原希子/高良健吾/玉山鉄二/霧島れいか/柄本時生/初音映莉子
公式HP:http://www.norway-mori.com/
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