エリジウム ／ Elysium

『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督がマット・デイモン、ジョディ・フォスターというハリウッドスターを主演に迎え、近未来のロサンゼルスを舞台に描いたSF映画『エリジウム』。

ロサンゼルスが舞台と言いつつも、地球は貧困層の住む環境汚染された世界という設定のため、LA感はゼロ。
ロケはアメリカではなくメキシコシティで行われたそうです。

ストーリーや設定にはどこか既視感を感じるものの、宇宙に浮かぶ巨大建造物へのこだわりや、意外な日本趣味にニール・ブロムカンプ監督のノリが感じられるこの作品。
シャールト・コプリーの日本刀使いや対決シーンの桜風吹（に見える浮遊物）などには、映画オタクの映画愛を感じずにはいられません。
彼の監督作品には、映画への愛だけでなく、“一人の女性を想い続ける”ような純情でロマンチストなところも感じられるので、女心もくすぐられちゃいますね。

ああ、よく考えると、一人の男性が自らの身体を異形に変形させつつも、一人の女性を想い続ける、という点でも、『第9地区』とも通じるところがあるんだなあ。。。

汚染された地球に暮らす貧困層の若者が、地上200キロのスペースコロニーに暮らす富裕層に戦いを挑むこの物語。

主人公のマックス（マット・デイモン）は、勤務中の事故で照射線を浴び、内蔵が破壊状態に。
その治療をするため、エリジウムにある医療ポッドを利用しようとします。
しかし、エリジウムに入れるのは、選ばれた一握りの人のみ。
そこでマックスは、闇商人のスパイダーと取引をして、エリジウムで暮らす権利を持つ金持ちの脳データを、自分の脳にダウンロードし、スパイダーに渡すことで、エリジウムへ入れるニセIDを手に入れようとします。
そのために、エクソスーツというマシンを身体に結合させ、サイボーグのような身体になるのです。

そして、自分が働いていた会社のオーナー・カーライル（ウィリアム・フィクナー）の脳データを狙い、カーライルを襲おうとします。
そこに、カーライルと密約を結んでいたエリジウムの防衛長官・デラコート（ジョディ・フォスター）が差し向けた刺客・クルーガー（シャールト・コプリー）が、マックスを狙い、襲ってくるのです。。。

こんな感じで、この物語、ちょっと複雑。

マックス←（雇用関係）←カーライル
カーライル→（密約）←デラコート
マックス→（脳データを狙う）→カーライル
クルーガー←（雇用関係）←デラコート
クルーガー→（命を狙う）→マックス
デラコート→（命を狙う）→マックス

という感じで、かなり入り乱れているのです。
そこに、マックスが想いを寄せる幼なじみの女性・フレイ（アリス・ブラガ）も絡んで来たりするので、ボーッとしていると「なんでこの人はこの人と戦ってるんだっけ？」と、戦いの理由がわからなくなったりするかも。

ただ、まあ、マックスの戦いの理由は「生き延びるため」から「愛する人を守るため」、「愛する人たちを守るため」と、だんだんと変化していくのです。

近未来を舞台とした、マックスの愛と戦い、そして成長の物語、『エリジウム』。
理想郷“エリジウム”の美しい映像、細部にまでこだわって作られたサイボーグのようなエクソスーツ、桜風吹の舞う中の男同士の決闘など、ニール・ブロムカンプのこだわりに満ちた、SFエンターテインメント作品です。