【映画レビュー】パーマネント野ばら
西原理恵子の名作コミックを、菅野美穂主演で映画化した『パーマネント野ばら』。
高知県の港町に生きる女性たちの、おかしくも悲しく、でも力強い生命力に驚かされる一作です。
何と言っても、出て来るおばちゃんたちが強い強い!
きっついパンチパーマをあてて(あえて、“あてて”と言いたい)、お煎餅を食べながら「あのチ○○はよかったわ…」と、昼間っから下ネタ全開のオバサマがた。
恋をした日には、自転車に相手を乗せて、むりくりラブホにはたき込みます。
どれだけ修羅場をくぐったら、人間あそこまで強くなれるんでしょうか…。
あのおばちゃんたちに比べたら、菅野美穂や小池栄子なんて、やっぱりまだ小娘ですね、小娘。
<STORY>
夫と離婚したなおこは、娘・ももを連れて海辺の町にある実家に帰って来ていた。実家では母・まさ子が「パーマネント野ばら」という町に一軒しかない美容室を営んでいた。その美容室は、町の女性の社交場として、毎日いろいろな下ネタ話や恋バナに花が咲いていた。なおこのおさななじみのフィリピンパブのママ、みっちゃんも美容室の常連だ。なおこは、美容室を手伝いながら、誰にも秘密で高校教師のカシマと密かな恋をしていた…。
<解説>
どうしたって、おばちゃんたちの存在感が頭に残ってしょうがない本作。
パンチパーマで「チ○○、チ○○」と連呼するお姿には、どうしたってまだまだ追いつけないと思ってしまいます。
でも、この映画の中で強いのはおばちゃんたちだけ。
男の人はというと、しょうもない浮気者だったり、電柱をチェーンソーで切り倒すおっさんだったり、ギャンブルに身を持ち崩してしまいには野垂れ死んじゃうホームレスだったり、海辺で人を待ちぼうけさせるひとだったり。
いずれにしろ、ろくでなしばかりです。
でも、なんだかんだ言って、この強ーい女性たちは、男の人を見捨てない。
ろくでなし男たちを養ったり、世話をしたり、傍にいてあげたり、埋めてあげたりしているのです。
本作を観ていると、なんだか原始の共同体って言うのはこんな感じだったんだろうなあと思ってしまいます。
基本的に女性(母親)が中心で、子どもたちや老親の世話をしている。
男と言えばたまーにフラッと帰ってきて、種だけ残してまたどこかに出て行くっていう。
極端に言ってしまえば「おしゃべり仲間とチ○○さえあったら、それでええねん」という感じ。
「パーマネント野ばら」に集うおばちゃんたちには、もうこれ以上必要ないのです。
それに比べて、主人公のなおこと、その幼なじみのみっちゃんとともちゃんは、まだその域には達していません。
浮気をされても男に尽くし、殴られ蹴られてもお金を渡し、「どんな恋でもないよりましやん」と男の足にしがみつく。
おばちゃんたちに比べれば、まだまだ場数が足りないということなんでしょうかね。。。
あのおばちゃんたちがどれだけ“はたき込み”をして、あの境地に達したか…、知りたいような、知りたくないような。
この映画、茶髪の超パンチパーマの夏木マリや、パンチパーマのおばちゃん軍団など、なかなか濃ゆ~いメンツが揃っていますが、なおこの幼なじみのフィリピンパブのママ・みっちゃんを演じた小池栄子が、なかなかキレた演技を見せてくれています。
なんせ登場シーンから魚てづかみ。髪の毛の傷み具合まで役にぴったり。
パンチパーマのおばちゃん軍団に負けないだけの存在感を醸しだしながら、恋に生きる女・みっちゃんをリアルに演じています。
あのみっちゃんはきっと、将来パンチパーマをかけて、野ばらでお煎餅食べてるんだろうなぁ…。
女は修羅場をくぐればくぐるほど、強くずうずうしくなるのです。
そして、その修羅場について、ガハガハ笑いながら話せるようになった時、女はオバちゃんになるのかもしれません。。。
『パーマネント野ばら』(100分/日本/2010年)
公開:2010年5月22日
配給:ショウゲート
劇場:新宿ピカデリー、シネセゾン渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国にて
原作:西原理恵子
監督:吉田大八
出演:菅野美穂/小池栄子/池脇千鶴/宇崎竜童/夏木マリ/江口洋介
公式HP:http://www.nobara.jp/
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