【映画レビュー】ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 / Nebraska
『アバウト・シュミット』、『ファミリー・ツリー』などの監督・脚本を手がけたアレクサンダー・ペイン。
“老い”や“家族”について、ソフトに問題提起してきた彼が、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』で描いたのが、老いた両親と初めて向き合う息子の物語。
かつては強く正しい存在だった父にアルツハイマーの影を感じたり、厳格だった母親から下ネタを聞かされたり、子どもが大人になったからこそ向き合わなければならない問題を、優しいモノクロームの映像で描いています。
<STORY>
モンタナ州で暮らすウディ・グラントのもとに、100万ドルが当選したという手紙が届く。明らかに詐欺まがいの手紙をウディは信じ込み、ネブラスカまで100万ドルを受け取りに行くという。止めても聞かないウディに手こずったウディの次男・デイビッドは、彼を車に乗せて4州にまたがる旅に出る。途中で長男と母親も合流することとなり、デイビッドたちは家族で若い頃に両親が暮らしていた町に滞在する。息子たちは初めて両親の若い頃の姿に思いをはせる…。
<解説>
アメリカの中西部・ネブラスカ州の名前をタイトルとするこの映画。
ウディとその家族たちは、モンタナ州のビリングスからネブラスカ州のリンカーンまで、ゆっくりとした旅をすることになります。
そこにあるのは、何十年も変わらないような、アメリカの田舎の風景。
そこで続いている人びとの暮らしも、何十年も変わっていないのだろうなあと思わせるようなのどかな風景が続いています。
しかし、よく言えばのどかなその町々は、悪く言えば進歩もなく、停滞したままの町とも言えます。
そこでの暮らしにあるのは、家族主義と言えば聞こえはいいものの、個人の意志は関係なく参加しなくてはいけない親戚付き合い、何年の前のネタで延々と引っ張られる笑い話、あの頃はああだったあの頃は良かっただのという昔話などなど。
狭い人間関係の中で濃い感情が煮詰まり、横並びを良しとし、出る杭を許さない世界でもあるのです。
ダイナーに行けば、昔の仲間達があいも変わらずつるんで遊んでいたりし、昔のネタを引っ張り出されたりするわけです。
アメリカにおいても、田舎の人間関係というのはあまり日本と変わらないのですね。。。
ペイン監督は、そんなアメリカ中世部の人間模様を、ユーモラスに描き出しています。
これまであまり話をしてもいなかった両親のことを、車の旅を通して理解するようになった息子たちは、ある小さな復讐を遂げ、父親と母親が抱えていたわだかまりを解消します。
息子が父親の保護者になる瞬間、それは父親にとっては悔しくもあるのでしょうが、嬉しい瞬間でもあるのかもしれません。
そして、その瞬間こそが、息子が本当の意味で“大人になった”瞬間なのかもしれませんね。。。
年老いた頑固オヤジを演じるブルース・ダーン、小言は多いものの家族へのシニカルな愛情にあふれる母親を演じるジューン・スキップがなんともいい味。
そして、こまり顔が可愛い中年子どものウィル・フォーテも、役柄にぴったりの“大人になりきれていない大人”の雰囲気をステキに醸し出しています。
別コラム:オトコに見せたいこの映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(115分/アメリカ/2013年)
原題:Nebraska
公開:2014年2月28日
配給:ロングライド
劇場:TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ブルース・ダーン/ウィル・フォーテ/ジューン・スキップ/ステイシー・キーチ/ボブ・オデンカーク/マリー・ルイーズ・ウィルソン/ミッシー・ドーティ/アンジェラ・マキューアン/ランス・ハワード/デヴィン・ラトレイ
公式HP:http://nebraska-movie.jp/
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