【映画レビュー】愛する人 / Mother & Child
ナオミ・ワッツが妊娠中に、大きなお腹で撮影に臨んだことでも話題になっている映画『愛する人』。
原題の『Mother & Child』が示す通り、様々な母と子ども(特に娘)を描いた物語です。
『バベル』、『21グラム』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが製作総指揮を手掛け、『彼女を見ればわかること』のロドリゴ・ガルシアが監督・脚本を務めた本作。
違う場所で展開する母と娘の命のドラマを真摯に追い、最後にひとつの収束点に向かわせるという、彼ららしい作品に仕上がっています。
<STORY>
14歳で妊娠して産んだ娘を養子に出したエリカ。彼女は37年間、名前も顔もわからない娘の幸せを願い、彼女に手紙を書くことを生きがいにして生きていた。37歳の弁護士、エリザベスは母親の顔を知らずに育った女性。弁護士としてのキャリアを積み重ね、生まれ故郷のロサンゼルスに戻って来たのだ。エリザベスは新しい弁護士事務所のボスや、隣人夫婦の夫とも関係を持ち、奔放な生活を送っていた。しかし、ある日彼女の妊娠が発覚する…。
<解説>
本作には、様々な母と娘が登場します。
14歳で子どもを産んだものの、すぐに子どもと引き離され、それから37年間悔恨の中で生きて来た母。
娘の将来と幸せを願って、娘の子どもを生まれてすぐに養子に出した母。
子どもが欲しいと望み、自分の娘ではなくとも養子を得ようとする母。
妊娠したものの、自分で育てられずに子どもを養子に出そうと考えている母。
妊娠したことにより、自分を産んだ母のことに想いを寄せるようになり、母・自分・子どもの三世代で和解しようとする母。
どの母も、子どものことを大事に考えていることには違いがありません。
子どものことと自分のことを考え、いろいろな運命を選択するのです。
その選択が、将来的に自分や子どもを傷つけることもあります。
しかし、結果的に間違っていることはあっても、その時、せいいっぱいに考えて出した結果なのです。
母親の下した決断は、自分と子どもの人生に大きな影響を与えます。
その決断には、夫や恋人の男性には口を出すことができないのだと思います。
そして、その決断に対するわだかまりが解けた時、母親の人生に初めて安息が訪れるのでしょう。
そして、子どもの人生に幸せが訪れたと感じた時に、母親は初めて自分の人生を幸せと感じるのかもしれません。例え、その時、自分の人生に死が訪れていたとしても…。
この作品は、男性と女性、子どもを産んだことのある女性とない女性、子どもを手放した女性と自分で育てている女性、など、その人の生きて来た道程により、感想が大きく違ってくるような気がします。
女性にとっては、自分が何を得て、何を手放して生きて来たのか、大きな視点から問われているような映画だと思います。
『愛する人』(126分/アメリカ=スペイン/2009年)
原題:Mother & Child
公開:2011年1月15日
配給:ファントム・フィルム
劇場:Bunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズシャンテほか全国にて
製作総指揮:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
監督・脚本:ロドリゴ・ガルシア
出演:ナオミ・ワッツ/アネット・ベニング/ケリー・ワシントン/ジミー・スミッツ/サミュエル・L・ジャクソン
公式HP:http://aisuru-hito.com/
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