【映画レビュー】3月のライオン【前編】
「あのホンワカした羽海野チカのコミックを、大友啓史監督が映画化? 大友監督といえば、『るろうに剣心』とか、アクションが売りの監督なのに…。世界観違いすぎじゃないかしら?」
そう思いながら観に行った映画『3月のライオン【前編】』。私のそんな心配は、まったく無用なものでした。
この前編は、羽海野チカの世界観を大友監督流の解釈で描いた、激しい戦いの映画。
一人の少年が、大人になろうと傷つきもがきながら戦い抜く姿を描いています。
そして、多くの傷を抱えながらも戦い抜き、生き抜いてきた、歴戦の勇者たちの戦いぶりを克明に描く、“戦記”と呼んでも過言ではないかもしれません。
<STORY>
桐山零は、9歳の時に交通事故で家族を失って以来、父親の友人だったプロ棋士の幸田柾近の家で内弟子として育てられてきた。零の将棋の才能に嫉妬した幸田の実の娘である姉の香子からは激しい敵意を向けられるが、中学生でプロ棋士としてデビューする。やがて17歳にして一人暮らしを始めた零は、近所に住む川本三姉妹と出会い、家族のぬくもりを味わうように。棋士として将棋に挑む零は、獅子王戦、新人王戦という二つのトーナメントに挑み…。
<解説>
この映画では、神木隆之介が天才プロ棋士の桐山零を演じています。
幼い頃から芸能界から天才子役として活躍し、多分身を削りながら努力を続けてきたであろう彼の人生は、桐山零の生き様に重なるものがあるのかもしれません。
神木隆之介は、まさにコミックからそのまま抜け出してきたように、その所在無さげな桐山の佇まいを再現しています。
この『3月のライオン【前編】』の主人公・桐山零は、9歳で親を亡くし、将棋だけに人生を懸けてきた男の家で、将棋の才能だけを愛されて生きてきた少年です。
家では将棋を指し続けなければ育ての親から認められることができず、しかし将棋を刺し続ければ姉や兄から憎まれてしまう。
好きではないけれど、将棋がなければ生きていけない。
将棋の才能があるがゆえに、愛され、そして憎まれる。
そんな、相反する葛藤の中で、一人で生き抜いてきた少年なのです。
そして、川の見える部屋で一人暮らしを始めた頃、彼は自分が一人ではないことに気づきます。
彼の周りには、実は自分を支えてくれている友人や知人たちが、多く存在していました。
一人は、幼い頃からの将棋仲間で心友(ライバル)、ちょっとうざいおせっかいな友人・二階堂晴信(染谷将太)、近所に暮らし手作りの食事などをふるまってくれる川本あかり・ひなた・モモという三姉妹(倉科カナ/清原果耶/新津ちせ)。
一年遅れで入学した高校で、唯一の話し相手である担当教師・林田高志(高橋一生)。
他にも、距離を置きつつも彼を見守ってくれている人は多く存在しています。
零は、彼らの存在にホッと息をつきながら、将棋のトーナメントに挑んでいきます。
この将棋トーナメント、本作では獅子王戦、新人王戦が描かれていますが、これが本当に過酷です。
佐々木蔵之介演じる島田開A級八段、伊藤英明演じる後藤正宗A級九段、加瀬亮演じる宗谷冬司名人。
彼らが見せる盤上の戦いは、静かながらも熱く激しく、極度の緊張感を感じさせるもの。
大友啓史監督は彼らの戦いをさまざまな角度から切り取り、その戦いの過酷さを表現していきます。
実力派俳優たちの重厚な演技、そして監督の演出が、その一手一手に魂が入っており、棋士たちが命を懸けて戦っていることを理解させるのです。
『3月のライオン【前編】』では、理解者がいることに気づき始めた桐山零少年が、他の棋士たちの将棋にかける思いを知り、棋士の自覚に目覚め、ただ生きる手段としての将棋でなく、将棋に命を懸けて挑む戦士として立ち上がる様子を描いています。
棋士として立ち上がった少年が、後編ではどんな男になっていくのか…。
大友啓史監督が描く『3月のライオン【前編】』、無様でも真剣に生き抜く人間の強さ、カッコ良さを見せつけてくれる、力あふれる骨太な物語でした。
『3月のライオン【前編】』(138分/日本/2017年)
英題:MARCH COMES IN LIKE A LION
公開:2017年3月18日
配給:東宝=アスミック・エース
劇場:全国にて
原作:羽海野チカ
監督・脚本:大友啓史
脚本:岩下悠子/渡部亮平
音楽:菅野祐悟
主題歌:ぼくのりりっくのぼうよみ
出演:神木隆之介/有村架純/倉科カナ/清原果耶/佐々木蔵之介/加瀬亮/伊藤英明/豊川悦司/中村倫也/染谷将太/原菜乃華/高橋一生/尾上寛之/岩松了/甲本雅裕/斉木しげる/板谷由夏/前田吟/新津ちせ
Official Website:http://www.3lion-movie.com/
東宝 (2017-09-27T00:00:01Z)
¥1,980 (中古品)
東宝 (2017-10-18T00:00:01Z)
¥3,347
ビクターエンタテインメント (2017-03-08)
売り上げランキング: 48,361
白泉社 (2017-03-10)
売り上げランキング: 1,606
白泉社
売り上げランキング: 565
売り上げランキング: 5,395
白泉社 (2017-02-28)
売り上げランキング: 390