【映画レビュー】万引き家族
2018年の第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞であるパルムドールを受賞した是枝裕和監督作『万引き家族』。
都会の片隅に打ち捨てられたようなボロボロの一軒家で、軽犯罪を繰り返しながら肩を寄せ合って暮らす6人の老若男女の姿を描いています。
“万引き”が生活の糧の一つとなっているこの家族は何を盗み、何を盗まれたのか……。
彼らの罪はなんなのか。その罰はなんなのか。
社会から取り残された者たちが犯さざるを得ない罪。そして彼らが罪を犯さざるを得ない理由。
格差社会が広がる現代の日本で、確かにそこにいる、けれどなかなかマスコミなどでは取り上げられない“家族たち”について、考えるきっかけを与えてくれる作品です。
<STORY>
建設現場で日雇いで働く治と、クリーニング工場で働く信代は、母の初枝の家で彼女の年金を目当てに暮らしている。信代の妹の亜紀は風俗のJK見学店で働いている。小学生の祥太は学校に行かず、治からスーパーで万引きする方法の手解きを受けていた。ある日、治が団地の一階の屋外廊下で震えていた小さな女の子・ゆりを連れ帰ってきた。家で虐待を受けていたらしい百合を加え、治たちはまるで元から6人家族であったように暮らし始めるが……。
<解説>
第66回カンヌ映画祭にて『そして父になる』で審査委員賞を受賞した是枝裕和監督。
本作『万引き家族』では、21年ぶりのパルムドールを日本映画界にもたらしてくれました。
『誰も知らない』、『海街diary』など、様々な形の家族の在り方を描いてきた是枝裕和監督が本作で描いたのは、日本の社会に見捨てられた“寄せ集め”の家族たちの姿です。
朽ち果てそうなボロ屋で年金で生きるおばあちゃん。パチンコ屋さんで、他人が出したドル箱をちょろまかしたりしています。
日雇いで建設現場で働くお父さんの治。子どもたちに万引きのやり方を教えたりもします。
クリーニング工場で働くお母さんの信代。預かった衣類の中に入っていた小物をちょいちょいくすねたりもしています。
JK風俗で働くお姉ちゃんの亜紀。積極的に罪を犯すことはしませんが、家族が万引きしてきた物を食べたり使ったりしています。
学校に行かず、食べ物や日常品を万引きし、家族に貢献する子どもの祥太。
実の親から虐待やネグレクトを受けていたゆり。家に帰らず、この家族と共に暮らしていきたいと願います。
社会の片隅で暮らす彼らは、国から年金をもらっているおばあちゃん以外は皆、社会制度から離れたところで生きる人たち。
治は仕事中に怪我をしても労災もおりない日雇いだし、修代も上司から一言でクビになる雇用形態。もちろん退職金なども出る事はありません。
亜紀もJK風俗店で日々の糧を得ているだけで、祥太もゆりも学校にも行っていない。
おばあちゃんは社会的には独居老人として一人で生きていることになっています。
つまり、住民票がそこにあるのはおばあちゃんだけで、おばあちゃん以外の皆は、社会的には“そこにいない”人々なのです。
彼らは“そこにいない”者同士で気遣いあって暮らしています。
その気遣いは義務に縛られないもので、「人は一人では生きられない」という本能から来るもの。
彼らは自分の差し出せるものを差し出して、家族を助け、家族に助けられているのです。
「親が子どもを養わねばならない」
「子どもは親の言うことを聞かなければならない」
そんな“理屈”や“理由”がない彼らだからこそ、その結びつきは本能的なもの。
だから、だらしないところやカッコ悪いところも見せるし、本能的な部分で生き残るため、サバイブするための方策を教えようとするのです。たとえそれが法律的には悪いことであったとしても……。
「親子だからこうしないといけない」「法律で決められているから従わないといけない」、そんな理屈の中で生きていると、彼らの間に確かに存在した、愛や真実は見えません。
是枝監督はそんな“そこにあるのに多くの人たちからは見えていない”人々の、一面の真実、そして日本の社会にある一つの現実を、彼らの存在に気づかずにいる私たちに示してくれました。
『万引き家族』(120分/日本/2018年)
英題:Shoplifters
公開:2018年6月8日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:細野晴臣
出演:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴/片山萌美/柄本明/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林/井上肇/黒田大輔/松岡依都美/毎熊克哉/笠井信輔/三上真奈/蒔田彩珠/清水一彰
Official Website:https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
ポニーキャニオン (2019-04-03T00:00:01Z)
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