【映画レビュー】空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎 / 妖猫传
チェン・カイコー監督が手がける日中合作の大作映画ということで、なんとなく勝手に、沙門空海が唐の都・長安でいかに仏教を学び、いかに密教を日本に伝えるのかを描いた歴史大作だと思っていた私。
鑑賞後、タイトルの『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』のなかにある“美しき王妃の謎”という部分を、あまり深く考えていなかったことに気づきました。
そう、この映画の原作小説は夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。
しかも中国語の原題が「妖猫传」、英題が「Legend of the Demon Cat」であることを考えると、そんな映画であるわけがなかったのです。
本作は、広大な長安の都を舞台にした、いわば伝奇ファンタジー。
呪いの黒猫や幻術、秘法が当たり前にそこにある世界で、不思議な妖猫をめぐる物語が繰り広げられていきます。
個人的に、中国的なトゥーマッチな世界観は大好き。
なんかこう、1990年代の香港映画的な雰囲気を感じたりもしたりして…。
<STORY>
遣唐使として唐の長安にやって来た若き日本の僧・空海は、権力者たちが次々と不審な死を遂げていることを知る。は、空海は若き詩人の白楽天と出会い、友情を深めていった。白楽天は楊貴妃と皇帝の愛を歌う詩“長恨歌”を書こうとしていた。その頃、ある役人の周囲の人物たちが妖しい黒猫に取り憑かれてしまう事件が発生。空海と白楽天は、その黒猫の狙いを探るうちかつて唐にやって来ていた日本人、阿倍仲麻呂の日記にその謎が隠されていることを知る。
<解説>
染谷将太が頭を剃りあげて空海を演じているこの作品。
構想10年にわたり、チェン・カイコーが温めてきた作品だそうで、気合の入った超大作になっています。
なんと言っても驚きなのはそのセット。
東京ドーム8個分にも及ぶ敷地に約6年という歳月をかけて作り上げたそうで、本当に歴史や重厚感を感じさせる映像を楽しむことができます。
なんと、空海が訪れる青龍寺のセットは、現在では実際の寺院として使われているそうで…。いかに本格的なセットなのかをうかがい知ることができますね。
基本的に唐の長安が舞台ということで、染谷将太や阿倍仲麻呂を演じる阿部寛のセリフはすべて中国語となっています。
(とはいえ、日本では中国語版での上映はなく、すべて日本語吹替版での公開になるそうなのですが…)
空海の相棒となるのは、白楽天。のちに白居易と呼ばれることになる中国人の詩人です。
この白楽天、楊貴妃と皇帝の愛をうたう「長恨歌」という詩の作者なのですが、空海と白楽天はコンビを組んで都を騒がせる黒猫の呪いについて調べることとなります。
そして二人は黒猫の呪いがかの傾国の美女、楊貴妃にまつわるものであることを。
そして楊貴妃の近くにいた遣唐使・阿倍仲麻呂の日記に、楊貴妃の死の真実が描かれていることを突き止めるのですが…。
ある種、空海と白楽天のバディムービーのような趣もあり、タイプの違う若き天才二人のやりとりもなかなか面白く、染谷将太と白楽天を演じるホアン・シュアンの演技が光ります。
他にも酔っ払いじいさんのような詩仙・李白や、玄宗皇帝といった実在の人物も出てくるので、中国歴史好きの方は、この映画が提示する安史の乱の後の物語をより楽しめるかもしれません。
それにしても、こんな感じの伝奇ファンタジーにこれだけの時間と予算と熱量を注ぎ込むとは…。
チェン・カイコーすごい、っていうか、中国のトゥーマッチさって本当にすごいと関心しますね。。。
広大な大陸で莫大な人口のいる中国の人って、やっぱり狭い島国育ちの日本人とは、基本的に何かが違うんだなー。はい、嫌いじゃない。むしろ好きです。
『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(132分/中国=日本/2017年)
原題:妖猫传
英題:Legend of the Demon Cat
公開:2018年2月24日
配給:東宝、KADOKAWA
劇場:全国にて
原作:夢枕獏
監督・脚本:チェン・カイコー
音楽:クラウス・バデルト
出演:染谷将太/ホアン・シュアン/チャン・ロンロン/阿部寛/松坂慶子/火野正平/チャン・ルーイー/シン・バイチン/ティアン・ユー/チン・ハオ/キティ・チャン/チャン・ティエンアイ/リウ・ハオラン/オウ・ハオ/シャー・ナン/リウ・ペイチー/チェン・タイシェン/ワン・デイ
声の出演(日本語吹替版):高橋一生/吉田羊/イッセー尾形/六角精児/東出昌大/寛一郎/不破万作/六平直政/山寺宏一/沢城みゆき/花澤香菜/金田明夫/早見沙織
Official Website:http://ku-kai-movie.jp/
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