【映画レビュー】くれなずめ
劇団ゴジゲンを主宰し、映画と演劇の世界を軽やかに行き来する松居大悟監督。
松居監督の個人的経験を踏まえて制作した同名演劇を映画化したのが、本作『くれなずめ』です。
日が暮れるようで暮れない、曖昧な時間。
もう青春時代ではない、かといって中年でもない、そんな年代。
生きてるようで生きていない、そんな曖昧な思い出の友人。
そんな、子どもではないけれど、大人になった自信もない、何者にもなりきれない、でも時間だけは確実に過ぎている……。30代と言えば、まだそんな人も多いのでしょう。
本作『くれなずめ』は、久しぶりに再会した高校時代の友人たちが共に過ごせる最後の“くれなずむ時”を描いた、どこかノスタルジックで、でも笑えてしまう青春映画です。
STORY
友人の結婚式で余興を披露するため集まった、高校時代の帰宅部の仲間たち6人。彼らは高校時代の思い出の曲を、思い出の赤い褌で歌って踊ろうとしていた。式場やカラオケボックスで練習したりダベったりしながら、高校時代に文化祭でやったコントの舞台や、一緒に寝泊まりした夜を思い出していた。彼らの中心には、いつも吉尾がいた。劇団を主宰している欽一と役者の明石、社会人となったソース、大成、ネジは、5年ぶりに吉尾と再会したのだが……。
解説
クリープハイプの尾崎世界観の原案を映画化した『自分の事ばかりで情けなくなるよ』、クリープハイプのライブを見るため、九州から東京まで自転車に乗って向かう女子高生たちの姿を描く『私たちのハァハァ』、劇場を舞台に、中止になった演劇を演じようとする少年少女たちの姿を74分間ワンカットで描いた『アイスと雨音』など、映画を演劇の手法で描いたりと、オリジナルな方法で映画を作り続けている松居大悟監督。
自身が主催する劇団ゴジゲンの舞台を映画化した本作『くれなずめ』では、回想や一人二役、象徴化など、小劇場演劇の文法を活用しながら、見事な劇場映画に仕上げています。
この映画のメインキャラクターとなるのは、高校の頃から一緒にバカ話をしたり、コントを演じたりしていた6人の仲間たち。
出会いから12年の年月が過ぎ、友人の結婚式をきっかけに、5年ぶりに6人が再会します。
彼ら6人が最後に会ったのは、欽一と明石の劇団公演の時。
芝居終わりに挨拶をしたのを最後に、吉尾(成田凌)と会うことができなくなっていたのでした。
そして、なぜかその5年後に、吉尾が5年前と変わらぬ姿で現れたのです。
友人たちは、そんな吉尾をすんなりと受け入れ、かつての思い出話や馬鹿話に花を咲かせるのでした。
でも、吉尾がまったく変わらないのに、仲間たちは少しずつ大人になっていっていることに、否応なく気づいていくのです……。
あの時「それが答えだ!」と思っていたとしても、年月の移ろいにより、それが答えじゃなくなったり、新たな答えが見つかったり、そもそもそれ以上の大きな問題が発生していたり……。
ウルフルズの歌う主題歌「ゾウはネズミ色」も、吉尾たちが歌い踊る「それが答えだ!」があるからこそ、より心にしみるのです。人間は生きている限り、変化していくものだから。
この作品は、劇団ゴジゲンの演劇作品を映画化したもの。
松居大悟監督のいなくなった友人のことを思ってつくった作品だということです。
いなくなったはずの友だちも、きっと変わらずにそこにいる。。。
くれなずむ空は、見る人によって、切なくもあり、懐かしくもあるものなのです。
作品情報
『くれなずめ』(96分/日本/2021年)
公開:2021年5月12日
配給:東京テアトル
劇場:テアトル新宿ほか全国にて
監督・脚本:松居大悟
音楽:森優太
主題歌:ウルフルズ 「ゾウはネズミ色」
出演:成田凌/高良健吾/若葉竜也/浜野謙太/藤原季節/目次立樹/飯豊まりえ/内田理央/小林喜日/都築拓紀/城田優/前田敦子/滝藤賢一/近藤芳正/岩松了/パパイヤ鈴木
Official Website:https://kurenazume.com/
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