【映画レビュー】KOTOKO
スクリーンに向かいながらも、怖くて怖くて仕方なく、激しい音と揺れ動く映像に、追いつめられていくような感覚を覚えた映画『KOTOKO』。
あまりにも怖かったのですが、精神的に追いつめられた人にとって世間はこのように暴力的で不安定に見え、小さな物音はこんなに轟音に聞こえているのかと、わかったような気がします。
塚本晋也監督とCoccoのコラボレーションは、この二人ならではの“今に生きる日本の母親像”を、リアルに描き出したものだと思います。
STORY
シングルマザーの琴子は、息子・大二郎を一人で育てている。琴子には世界がふたつに見え、近付いてくる人すべてが大二郎を襲ってくるように思える。大二郎を守りたいと神経過敏になり、精神的に追い詰められた琴子は、虐待を疑われて大二郎と引き離されてしまった。ある日、琴子は小説家の田中と言う男と出会う。琴子の歌声を聴き、運命を感じたと言う田中と琴子は一緒に暮らし始めるが、琴子のリストカット癖と田中への暴力はひどくなっていく…。
解説
ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門にてグランプリを受賞した本作。
企画自体は東日本大震災以前に上がっており、シナリオも3.11の時点では出来ていたということですが、不思議なくらい、現在の日本の状況と表しているように思います。
この作品で描かれているのは、子どもを守ろうと必死になり過ぎて、精神的に追いつめられていく母親の姿です。
Cocco演じる琴子を見ながら、私はどうしても、端から見ると過剰なくらい「放射能から子どもを守ろう」と必死になっている母親たちを思い出さずにはいられませんでした。
自分も傷つき、苦しみながらも、子どものために心を痛める琴子のような母親が、今の日本にはあふれているように思えてなりません。
満身創痍で世界と闘い、関わってくれる人をも傷つけずにはいられない、琴子のような過敏すぎる母親の心が安らぐ日がくればよいのですが…。
塚本晋也監督にとって、最も尊敬するシンガーソングライターだというCocco。
琴子の傷だらけの細い腕を見ていると、この作品はやはりCoccoの存在なくしてはありえなかった作品だと実感します。
作品紹介
『KOTOKO』(91分/日本/2011年)
公開:2012年4月7日
配給:マコトヤ
劇場:テアトル新宿ほかにて
企画・監督・脚本・撮影・編集・出演:塚本晋也
原案・企画・出演:Cocco
公式HP:http://www.kotoko-movie.com/
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