【映画レビュー】インビクタス/負けざる者たち / INVICTUS
2010年度、最初に紹介する映画はクリント・イーストウッド監督がネルソン・マンデラ大統領を描いた映画『インビクタス/負けざる者たち』。
リーダーとは何か、人を動かすとは何か、人々を変えるとは何か、ということを教えてくれる一作です。
<STORY>
1994年、アパルトヘイト(人種隔離)政策と闘って27年間投獄されていたネルソン・マンデラが南アフリカ共和国で初の黒人大統領に選ばれた。アパルトヘイトは撤回されるも、国内にはまだわだかまりがくすぶっていた。そんな中、マンデラは南アフリカのラグビー代表チーム・スプリングボクスの主将・ピナールをお茶に招く。ラグビーは白人の愛好するスポーツだが、スプリングボクスは“南アの恥”と呼ばれるほどの弱いチームだった。マンデラ大統領は、黒人と白人を一つにするため、1995年に南アフリカで行われるラグビーワールドカップを盛り上げようと考えたのだ。ピナールは大統領の負けざる魂に触れ、チームにもその魂を伝えていく…。
<解説>
ちょっとうがち過ぎかもしれないですが、この映画を観ていて、こう感じました。
この映画は、クリント・イーストウッド監督からオバマ大統領への愛情のこもった挑戦状ではないのかなあと。
「アメリカ合衆国に初めて誕生した黒人大統領、君はノーベル平和賞をもらったけれど、いったいどんなことが出来るんだい? かつて、南アフリカにはこんな素晴らしい大統領もいたんだよ?」
こんなメッセージが、聞こえてくるような気がしたのです。
ま、イーストウッドは共和党支持者らしいので、まったくの気のせいかもしれないですが。
物語のストーリーは、いたって簡単。
弱小ラグビーチームが、大統領からの数々のサポートを得て、ワールドカップで決勝戦にまで進出してしまうという物語。
日本のドラマにも似たようなのがありました。
でも、この作品では、どのようにチームが強化されていったのか、肉体的な面や戦術的な面は一切描かれていません。
描かれているのは、“魂”の成長。
大統領と会ったチームのキャプテンは、大統領が投獄されていた時に心の拠り所としていた詩を教えられ、彼の気高い魂に触れます。
そして、自分のやるべきことを悟り、チームを優勝へ導こうと決意するのです。
決して人に強制せず、自分で判断させる。
復讐や憎悪を許さず、自分がまず変化することにより、チーム全体、そして国民全体を変えていく。
モーガン・フリーマンの演じるマンデラ大統領や、マット・デイモンの演じるフランソワ・ピナール主将に、素晴らしいリーダーの姿をみました。
そんな彼らに導かれ、黒人は白人を赦すようになり、白人は黒人を同じ国の国民だと認めるようになるのです。
彼らの“負けざる魂”が、不可能だと思われたことを可能にしたのです。
でも、何より素晴らしいのは、これが実話だということ。
もちろん映画なので、ドラマチックな演出はされているのでしょうけれど、マンデラ大統領が語る言葉のひとつひとつ、白人運転手に抱きあげられた黒人少年が見せる歓喜の笑顔、黒人SPと白人SPが笑顔で交わすハイタッチ、そんな映像のひとつひとつに、ちょっと涙がこぼれそうになりました。
まあ、長々書きましたが、何が言いたいかと言うと、「感動した!」という一言なのでした。
それにしても、2008年に『チェンジリング』、『グラン・トリノ』という名作を2作続けて発表したかと思うと、その翌年にはこんな感動作を撮ってしまうクリント・イーストウッドってば…、こんな79歳がこの世に存在するかと思うと、ちょっとそら恐ろしくなりますね…。
『インビクタス/負けざる者たち』(134分/アメリカ/2009年)
原題:INVICTUS
公開:2010年2月5日
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
原作:ジョン・カーリン
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン/マット・デイモン/ザック・フュナティ/スコット・イーストウッド/ラングレー・カークウッド
公式HP:http://www.invictus.jp
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2018-02-17T00:00:01Z)
¥730
SMJ (2010-02-02T15:00:00.000Z)
¥2,442 (中古品)
NHK出版 (2009-12-23T00:00:01Z)
¥3,680