ヒステリア / Hysteria
バイブレーター発明秘話と聞き、なんだかちょっといかがわしい話なのかと思いながら観に行った映画『ヒステリア』。
しかしこの作品、そんな嫌らしい感じはまったくなく、むしろ女性の解放や社会進出を前向きに描き出す、爽やかなテーマの作品で、観終わった後にかなり爽やかな気分になる、素敵な映画でした。
まあ、ちょっといかがわしい作品を期待して観に行くと、逆にちょっと期待外れになってしまうかもしれませんが。。。
そう言えば、この作品のプレスを見ていてちょっと気になった点が一つ。
産婦人科女医・性科学者の宋美玄さんがこの映画に寄せた文章の中で、「マスターベーションを覚えたばかりの少女が、手が腱鞘炎になってしまって鉛筆が持てなくなり、家にある電動マッサージ機や電動歯ブラシに活路を見出すという、よくあるエピソード」という一文があるのですが…、このエピソード、ホントによくあったりするんでしょうか。。。
<STORY>
19世紀、第二次産業革命真っ最中のロンドン。若きグランビル医師は、女性医療の第一人者、ロバート・ダリンプルの医院で働き、女性器のマッサージ治療を行うことになる。ダリンプル医院には、進歩的な意見を持つシャーロットと貞淑なエミリーの二人の娘がいた。医院でグランビルは大人気となり、腱鞘炎に。医院をクビになったグランビルは友人の発明家が作っていた電動ホコリ払い機にヒントを得て、電気で動くマッサージ機を考案する…。
<Cheeseの解説>
時は19世紀、ヴィクトリア朝末期。
産業革命で生活は変革されつつありましたが、まだまだ権威主義がはびこっていたこの頃。
女性は禁欲を強いられ、参政権や財産権も認められていませんでした。
この時代、(1)すぐに泣く、(2)異常性欲、(3)不感症、(4)うつ病、(5)心配性などの症状にあてはまる女性はみな“ヒステリー”と診断されていたのだそう。
そして、この映画の主人公・グランビル医師(ヒュー・ダンシー)の働くダリンプル医院などでは、ヒステリー向けに特別な治療がなされていました。
その治療はどんなものかというと、いわゆる、性感マッサージ。
お上品なご婦人方が、治療のために澄まし顔で待合室に並んでいます。
そこで若きイケメンのグランビル医師はご婦人方から大人気となり、手が腱鞘炎で使い物にならなくなってしまいます。
そして、いわゆる“電マ”ことバイブレーターを考案するのです。
ここで新たに考案されたバイブレーターで、あるイタリア系のご婦人に治療を施すのですが、この描写がなんともユーモラス。
創意工夫にあふれていて、女性監督ならではの上品さを感じさせてくれました。
このグランビル医師と共にこの作品をひっぱっていくのは、マギー・ギレンホール演じるダリンプル医院の長女・シャーロット。
彼女は「女は成長したら結婚して家に入るもの」という常識に反発し、福祉施設を運営している女性。
女だてらに自転車を乗り回し、夜の一人歩きも平気です。
女性も参政権や財産権を手に入れられる日々が来ることを信じ、その日のために自分ができることを懸命にしているのです。
娼婦や労働者といった、階級が違う人びとの生活向上のために尽力し、主張すべきことは主張する、“新しい女性”なのです。
女性を性的に解放していくグランビル医師、そして女性を社会的に解放していくシャーロット。
現代の私たちのように、女性が自由に生きていくことができるようになったのは、彼ら先達がいたからなのだなあと、爽やかな気持ちでありがたく思えた、素敵な一作でした。
『ヒステリア』(100分/イギリス=フランス=ドイツ/2011年)
原題:Hysteria
公開:2013年4月20日
配給:彩プロ
劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷、有楽町スバル座、シネマート新宿ほか全国にて順次公開
監督:ターニャ・ウェクスラー
脚本:スティーヴン・ダイア
出演:マギー・ギレンホール/ヒュー・ダンシー/ジョナサン・プライス/フェリシティ・ジョーンズ/ルパート・エヴェレット/アシュレー・ジェンセン/シェリダン・スミス
公式HP:http://www.hysteria.ayapro.ne.jp/
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