【映画レビュー】ストレイ・ドッグ / Destroyer
その美しさを誰もが知る美人女優。
持って生まれたその“美”は、キャリアをもたらしてくれるものでもあるけれど、ある種、役を制限してキャリアを阻害してしまうものなのかもしれません。
この映画『ストレイ・ドッグ』は、誰もが認める美人女優・ニコール・キッドマンが、その美を打ち捨てて、荒んだ中年の女刑事役に挑んだ一作。
落ち窪んだ目、パサパサに傷んだ髪、乾ききってかさついた肌など、初見では「これがあのニコール・キッドマン?」と驚く人も多いはずです。
でも、どんなに荒んだ女性を演じても、その宝石のような碧眼の美しさは変わらず……。
その変わらない瞳の美しさに、どんなに荒れても変わらない、エリンの孤独な魂を見ることができました。
<STORY>
LA市警のエリン・ベルは、酒に溺れ、周囲や娘からも嫌われものの刑事だ。ある日、彼女の元に紫色に染まったドル紙幣が届く。差出人の名はなかったが、彼女にはそれがサイラスという男から送られたものだとわかる。エリンは17年前、FBI捜査官のクリスと共に、サイラス率いる砂漠地帯の犯罪組織に潜入していた。ある事件をきっかけにサイラスの組織は壊滅し、サイラスは逃亡していたのだ。その紙幣は、サイラスからの帰還の挨拶だった……。
<解説>
この物語の主人公は、LA市警の女性刑事、エリン・ベル。
上司の言うことを聞かず、相棒など関係なく単独行動上等な、酒浸りのはぐれものです。
別れた夫にもトゲトゲしく対応し、16歳の娘からも疎まれる、言ってみれば嫌われ者。
しかし、彼女がこんな嫌な女になったのにだって、理由があるのです。
それは17年前、FBI捜査官のクリスと共に、サイラスという男が率いる砂漠地帯の犯罪組織へ潜入捜査を行うことになったのが発端でした。
かつて、クリスと共に潜入するうちに、二人は恋に落ちます。
しかし、二人で未来を夢見た時、二人の未来は無残に散ってしまうのです。
クリスとエリンの働きで犯罪組織は壊滅しましたが、首領のサイラスは逃げ果せてしまいます。
その任務で、エリンはミッションを完璧に遂行できたわけではありませんでした。最重要人物であるサイラスを逃したのですから、中途半端な成果を上げただけと言えます。
その中途半端な成果を手に、エリンは自らの行為が引き起こた大きな悲劇に精神を苛まれ、心に大きな傷を受けました。
そして、その傷を抱えながら17年間を生きてきたのです。
任務の後に生まれた16歳の娘・シェルビーは、彼女の生きがいでもありました。でも、そんなシェルビーはエリンのことを嫌い、反抗的な生活を送るようになりました。
そんな中、エリンに届いた、サイラスからの帰還の挨拶。
エリンは取り憑かれたように、過去の遺恨をはらそうと、サイラスを探し始めます。
そして、サイラスに関係する人物たちのところをめぐり、酷い目にあいながらも、サイラスに近づいていくのですが……。
物語は17年前と現在、二つの時代を行き来しながら描かれています。
17年前のエリンは、肌の張りもある豊かな赤毛。若く美しい、少し傲慢ながらも不安定さも感じさせるキャラクターです。
そんなエリンが、セバスチャン・スタン演じるクリスと恋に落ち、未来のための新たな決意をするのです。
しかし、その決意は間違ったものでした。
LAの乾いた大地での明るすぎる日光は、明るすぎるがゆえに、逆に大切なことを見えなくさせるのかもしれません。。。
ニコール・キッドマンこの17年前と現在の二つの時代を見事に演じ分けています。
変わり果てた容姿、そして荒んだ心……。このエリンの変化も見どころの一つでしょう。
一人の女性の復讐をテーマとしたこの映画。
LAの乾いた大地で、一人の女性が人生を賭けた戦いに挑む姿が描かれています。
カリン・クサマ監督が“直射日光下のノワール”と表現するのにふさわしい、乾ききったLAノワールに仕上がっています。
『ストレイ・ドッグ』(121分/アメリカ/2018年)
原題:Destroyer
公開:2020年10月23日
配給:キノフィルムズ
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開
監督:カリン・クサマ
脚本・製作:フィル・ヘイ/マット・マンフレディ
製作:フレッド・バーガー
音楽:セオドア・シャピロ
出演:ニコール・キッドマン/トビー・ケベル/タチアナ・マズラニー/セバスチャン・スタン/ブラッドリー・ウィットフォード/ジェイド・ペティジョン/スクート・マクネイリー/トビー・ハス/ジェームズ・ジョーダン/ボー・ナップ/シャミア・アンダーソン/ザック・ヴィリャ
Official Website:https://www.destroyer.jp/
ギャガ (2020-08-05T00:00:01Z)
¥5,280
Happinet (2018-09-04T00:00:01Z)
¥4,228
ジェネオン エンタテインメント (2012-04-20)
¥850 (コレクター商品)
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2017-12-20T00:00:01Z)
¥2,620
松竹 (2011-12-19T00:00:00.000+09:00)
¥400