【映画レビュー】キャプテン・フィリップス / Captain Phillips
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズだったり、「ワンピース」だったり、どうにもカジュアルだったりカッコよかったりするイメージのある“海賊”。
“パイレーツ”というと、さらに楽しそうな感じすらしてきます。
でも、実際に船を襲ってきて、船員を殺したり誘拐したりするような輩というのは、地上で言えば“強盗”です。
“強盗”というと、カッコよくもないし、カジュアルでもないし、かなり恐ろしい…。
本作『キャプテン・フィリップス』は、2009年にソマリア海域でこんな“強盗”に襲われたフィリップス船長の実話をもとにした映画です。
部下を守るための危機管理の一環として自らが誘拐された中間管理職の悲哀、超大国の傲慢、国際情勢に翻弄される貧困国の貧困層の切なさ、そんなもろもろがミックスされ、なんとも切なくなってしまうような一作です。
<STORY>
2009年3月。アメリカのマースク海運に勤務するリチャード・フィリップス船長は、オマーンからケニアへ救援物資を運ぶマースク・アラバマ号に乗り込んだ。出航後、アラバマ号は、近頃活動が激化しているソマリアの海賊に遭遇。非武装のアラバマ号は、4人の海賊に侵入されてしまう。船員たちを船内に隠れさせ、フィリップス船長は交渉に臨んだ。しかし、海賊たちの乗る救命艇に連れ込まれたフィリップス船長は、人質となってしまう…。
<解説>
2009年にアメリカ、マースク海運のコンテナ船がソマリアの海賊に襲われ、船長が誘拐された事件を映画化した本作。
非武装のコンテナ船がマシンガンで武装した海賊達に襲われる恐怖。
船長として、乗組員や船を守ろうとするフィリップス船長の勇気。
誘拐されるという極限状況でも強い気持ちを持ち続けるフィリップス船長の心の強さ。
ポール・グリーングラス監督作らしい、スピーディーで緊迫感あふれる演出で、これらのことが描かれています。
が、ただそれだけではありません。
ソマリアの漁師として生きてきた人間が、政治情勢や環境汚染のために漁師としての仕事もできなくなり、生きるために海賊をしなければならなくなってしまっているという現実。
劇中ではっきりと描かれているわけではありませんが、やせこけたソマリアの漁民達が“生き残るために”海賊をせざるをえなくなっているという状況が描かれているのです。
この作品に登場するフィリップス船長も、ごく普通の一般人。善人と言ってもいいでしょう。
そして、彼を襲う海賊達も、決して極悪人ではありません。善人ではないけれど、生きるためにビジネスとして海賊をせざるをえない人たちなのです。
前半はそんなフィリップス船長と海賊達の緊迫感あふれるやり取りが続きます。
そして後半、フィリップス船長を救うため、US駆逐艦のベインブリッジ、さらに海軍特殊部隊ネイビーシールズが登場し、事態は国際問題として大きく発展してしまうのです…。
一人の船長の行動を中心に、大国・アメリカの一市民と、アフリカの貧困国・ソマリアに生きる一市民の立場の違いをあぶり出してみせる本作『キャプテン・フィリップス』。
ただのエンターテインメント作品には終わらせない、大きな問題を提起してくれる一作です。
個人的には、ネイビーシールズの登場シーンと作戦行動シーンにかなりテンション上がりました!
別コラム:オトコに見せたいこの映画『キャプテン・フィリップス』
『キャプテン・フィリップス』(134分/アメリカ/2013年)
原題:Captain Phillips
公開:2013年11月29日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて
原作:リチャード・フィリップス/スティーヴン・タッティ
監督:ポール・グリーングラス
出演:トム・ハンクス/キャサリン・キーナー/バーカッド・アブディ/バーカッド・アブディラマン/ファイサル・アメッド/マハット・M・アリ/マイケル・チャーナス/コーリイ・ジョンソン/マックス・マーティーニ/ユル・ヴァスケス/デヴィッド・ウォーショフスキー/クリス・マルケイ
公式HP:http://www.captainphillips.jp/
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