【映画レビュー】息もできない Breathless / 똥파리
<STORY>
サンフンは、借金の取り立て人として働いている。毎日、いろんな家庭を訪れて金を回収してくるのが彼の仕事だ。取り立てのためなら容赦なく暴力を振るい、女だろうと手加減はしない。彼には、父親の暴力で母親と妹を亡くしたという過去があった。そんな彼が、ある日一人の女子高生・ヨニと出会う。彼女はサンフンを恐れることなく、対等に立ち向かってくる。実は、ヨニの家庭でも父親が母親に暴力を振るい、死に追いやっていた…。
<解説>
韓国関連の書籍などを読んでいると、韓国の“家族の結びつき”の強さに驚くことがあります。
子どもが結婚して新しい家庭を気付かない限り、成人となっても、子どもは親と一緒に暮らすのが当たり前だそうです。
本作に出て来る主人公のサンフンも、父親を憎み、暴力を振るいながらも父親と一緒に暮らしています。
サンフンと心を通わせる女子高生・ヨニとその弟も、家族に対し苛立ちを感じ、父親から暴力を振るわれながらも、その家を出ようとしません。
韓国の人にとっては、家族の絆とは、どんなに切ろうとしても切れないものなのかもしれません。
もしかすると、切ろうとすら思わないほど、強固なものなのかも。
そのあたりは、日本人と少し感覚が違うのかもしれません。
ヤン・イクチュンはこの作品で製作・監督・脚本・編集・出演の5役を務めています。
製作費をねん出するために、自宅を売り払ってまでこの映画を作ったそう。
彼にとっては、そうしてまでも、この映画は“作らなくてはならないもの”だったのでしょう。
彼にとっての、家族のつながり、家族への愛、家族への憎しみ、それが形になったものが、この映画なのだと思います。
最後のシーンを観て。
自分は苛立ちながらも、家族のために努力してきた。みんなの幸せを作ろうとしてきた。
でも、自分がいない方が、家族は幸せなのかもしれない。
自分がいなくても、家族が笑顔でいられるならば、それでいいのかもしれない。
ふと、そんなサンフンの心の声が聞こえて来るような気がしたのでした。
『息もできない Breathless』(130分/韓国/2008年)
原題:똥파리
英題:Breathless
公開・2010年3月20日
配給:ビターズ・エンド
劇場:シネマライズほか全国にて順次公開
製作・監督・脚本・編集・出演:ヤン・イクチュン
出演:キム・コッピ/イ・ファン/チョン・マンシク/ユン・スンフン/キム・ヒス/パク・チョンスン
公式HP:http://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/
Happinet(SB)(D) (2010-12-03T00:00:01Z)
¥3,880