【映画レビュー】ゲキ×シネ「薔薇とサムライ Goemon Rock Over Drive」

劇団☆新感線 薔薇とサムライ LIVE CD GOEMON ROCK OVER DRIVE 古田新太 天海祐希 浦井健

私が学生時代から大好きで、10数年見続けている劇団☆新感線

その劇団☆新感線の芝居と映画を融合させ、演劇のいい部分を映画の形にギュッと閉じ込めたゲキ×シネの第9作目が届きました。

その名も、ゲキ×シネ『薔薇とサムライ Goemon Rock Over Drive』

宝塚歌劇団出身の天海祐希を主演に迎え、古田新太演じる新感線の名物キャラクター・石川五右衛門が大活躍する冒険歌劇です。

この作品は、劇団☆新感線の昔からの座付き作家である中島かずきが脚本を書いているのですが、これが“新感線”らしくてとても良かった!

もちろん、他の作家さんの作品やシェイクスピアモチーフの作品の公演も、よいのです。
でも、新感線の特徴の一つである、濃いキャラクターたちが好き勝手に大暴れしつつ、芯のキャラがストーリーを展開させていき、最後に怒濤のクライマックスに全員でなだれ込むという、あの展開がかっちり決まるのは、やはり中島脚本ならではだなあと。

さらに、中島脚本という新感線の王道路線でありつつも、いつもの“日本刀の殺陣とロックの冒険活劇”とはひと味違う、客演陣の特徴を活かした“西洋剣と宝塚歌劇の冒険歌劇”になっていて、新しいステージに踏み込んでいる感もありました。

主役ではない分、古田新太も自由にのびのびしていて良かったし、天海祐希も華麗なベルばらコスプレや海賊コスプレで、宝塚男役トップスターの実力と美貌をこれでもかというくらい見せ付けてくれました。

このゲキ×シネ『薔薇とサムライ Goemon Rock Over Drive』、素晴らしいケミストリーを実感できる作品だと思います。

STORY

17世紀のヨーロッパでは、海賊たちが7つの海で暴れ回っていた。ある日、民衆からも人気のある女海賊、アンヌ・ザ・トルネードが、“日輪の瞳”を持つコルドニア国王の血を引く王女であることが判明。王位不在だったコルドニアの王位につくこととなる。海賊時代、アンヌの用心棒だった石川五右衛門は、アンヌを奪回するために城に潜入。そこで、コルドニアを牛耳る大宰相ラーカムが大海賊バルバ・ネグロと結託して悪巧みしていることを知る。

解説

この作品、とにかく登場キャラが多いです。
客演で出演する人が決まったら、その俳優に合わせて当て書きをしているのだと思います。
だから、客演が増えれば増えるほど、キャラが増えてしまい、結果「その役は本当に必要か?」というキャラがいたりするのが、ちょっと残念なところではあるかも。

少しキャラの関係を整理しておくと…。

まず中心となるのは、女海賊・アンヌ(天海祐希)。
アンヌの周囲には、用心棒の石川五右衛門(古田新太)や、敵である海賊バルバ・ネグロ(橋本じゅん)らがいて、賑やかなパイレーツ・ライフを送っていました。

しかし、ガファス将軍(粟根まこと)にコルドニア城に呼ばれ、そこでアンヌが実は王女であったことがわかります。

その頃、コルドニア国は前王の死により王の血脈が絶えたと思われていて、王座は不在になっていました。
コルドニア国を支配していたのは、大宰相ラーカム(藤木孝)と、その娘・マローネ(高田聖子)。

ガファス将軍は、王族でもない人間が、我が物顔で国を支配しているのを苦々しく思い、王の血をひくアンヌを探し出したのでした。
ガファスの妻・エリザベッタ(森奈みはる)のレディ教育を受け、社交界にデビューしたアンヌは、隣国の王子・シャルル(浦井健治)に一目惚れされてしまいます。

その頃、アンヌは王国の平和のため、海賊討伐することを求められます。
それまで仲間だった海賊たちのことを思いつつも、平和のため、国のため、シャルルたちと一緒に海賊討伐を始めるアンヌ。

海賊たちはアンヌに対抗し、五右衛門をリーダーとする海賊連合を組織。
コルドニア王国軍VS海賊連合の戦争が始まるのですが…。

ここにさらに、ラーカムの孫娘(神田沙也加)や、日西ハーフのデスペラード豹之進(山本太郎)も絡み、物語は怒濤の展開を見せて行きます。

まあ、何が言いたいかというと、神田沙也加と山本太郎の役は、ちょっととってつけた感があったなあということです。
客演だと、部下役や侍女役にするわけにもいかなかったのかもしれないし、見せ場も与えないといけないのかもしれないけれど、ちょっともったいない使い方だなーと思ってしまいました。

それにしてもこの作品、天海祐希と森奈みはるの宝塚歌劇団出身女優、浦井健治や神田沙也加や藤木孝といったミュージカルで活躍する俳優陣の歌声が素晴らしい、新感線流の歌劇と言える作品だと思います。
宝塚パロディも楽しく、ヨーロッパ風のドレスや軍服も素敵で、これまでの新感線にはなかった、新しいテイストがいっぱいに詰まっています。

新感線のお芝居は観たことがないけれど、宝塚やミュージカルはよく観るといったような、新しい客層にも観て欲しい作品です。

作品情報

ゲキ×シネ『薔薇とサムライ Goemon Rock Over Drive』(197分/日本/2011年)
公開:2011年6月25日
配給:ヴィレッヂ、ティ・ジョイ
劇場:新宿バルト9、梅田ブルク7ほかにて
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太天海祐希橋本じゅん高田聖子浦井健治山本太郎神田沙也加森奈みはる粟根まこと藤木孝
公式HP:http://www.bara-samu.com/
ゲキ×シネ公式HP:http://www.geki-cine.jp/
ゲキ×シネ公式ブログ:http://gxcblog.exblog.jp/

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