【映画レビュー】アメリカン・ドリーマー 理想の代償 / A Most Violent Year
1981年というのは、ニューヨーク史上最も犯罪が多かった年だそうです。
本作、『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』の舞台はその1981年。
オイルビジネスで身を立てた移民の青年が直面する、ビジネスの中に存在する“闇”を描いています。
STORY
1981年、NYにてオイルカンパニーを経営する元移民のアベル・モラレスは、全財産をかけてユダヤ人から土地を購入し、手付金を打つ。残金は30以内に支払うという条件だ。その頃、アベルの会社のトラックが強盗にあい、積荷のオイルを奪われるという事態が続いていた。運転手組合の会長は自衛のため、運転手に銃を携帯させろと勧めるが、アベルは拒否する。ある日、アベルは検事のローレンスから脱税・詐欺などの疑いで告訴すると告げられる。
解説
ロバート・レッドフォードただ一人しか登場しない異色の映画『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』で高い評価を得たJ・C・チャンダー監督の長編映画第3作目となる本作。
本作では、一代でビジネスを大きくしてきたオスカー・アイザック演じるアベルが、危機に巻き込まれていく姿を描いています。
アベルは、クリーンに、まっとうに、コツコツとビジネスを拡大していこうとしている男。
念願の土地も手に入れ、豪邸に引っ越し、成功に手がかかったと思っていました。
しかし、そんな彼のビジネスの成長をねたむ同業者たちから妨害を受け、彼のビジネスの成長の裏に不正があるのではないかと睨んだ検事からは告訴されそうになります。
そんな彼を公私両面から支えているのが、ジェシカ・チャステイン演じる美しい妻・アナ。
ギャングの娘に生まれつつも、まっとうにビジネスを広げていこうとするアベルを信じ、パートナーとして経理などの仕事を担当しているのです。
1981年のアメリカは、1920〜60年代にかけて遂げた経済成長から一転しておちいった1970年代の燃料危機から抜け出したばかり。
政治の腐敗や行政の予算削減などにより犯罪率は増加し、これまで街の中心の住人だった白人たちの多くは郊外へ引っ越し、チャンスを求める移民たちがニューヨークになだれ込んできたタイミングでした。
市当局、マフィア、ビジネス界などの間の慣例がなくなり、これまでの秩序と均衡が崩れ、市民たちは新たな自衛手段を見つけなければいけなくなっていた時代なのです。
アベルは、そんな時代に乗じて成り上がった移民でもあるわけですが、一番大きな博打を打とうとしたその時に、時代から牙を剥かれてしまったのです。。。
まっとうに働こうとする男をも、暴力や犯罪に巻き込もうとしていく厳しい時代を描いたこの作品。
J・C・チャンダー監督の緊張感あふれる演出と映像美、オスカー・アイザックの抑制の効いた演技、ジェシカ・チャスティンの情熱と逸脱を感じさせる演技、そのどれも素晴らしいです。
ファッキンなアメリカン・ドリームにこだわる男、男の夢よりも家族の現実を重視しようとする女、あなたはどちらに感情移入するでしょうか。
夢と理想と現実の中で、夫婦はどんな結論を出すのか…。
アメリカン・ドリームとはなんなのか、アメリカン・ドリームを叶えることは本当に幸せなのか…。
厳しい現実を容赦なく描いた必見のヒューマン・ドラマです。
作品情報
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(125分/アメリカ/2014年)
原題:A Most Violent Year
公開:2015年10月1日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開
製作・監督・脚本:J・C・チャンダー
音楽:アレックス・エバート
撮影監督:ブラッドフォード・ヤング
出演:オスカー・アイザック/ジェシカ・チャステイン/デヴィッド・オイェロウォ/アレッサンドロ・ニヴォラ/アルバート・ブルックス/エリス・ガベル
Official Website:http://american-dreamer.gaga.ne.jp/
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