藁の楯 わらのたて
「多額の懸賞金が懸けられた犯罪者を、襲い来る一般人たちから守りながら護送する」ってストーリー、まんま『S.W.A.T.』だよなあ…などと思いながら観に行った映画『藁の楯 わらのたて』。
しかし、この作品は『S.W.A.T.』とはまったくの別物!
日本人ならではの職務意識、サムライのような精神性を感じられる作品で、やはり『一命』と同じ三池崇史監督作だなあと実感。
なぜか、同じ大沢たかお主演作の『桜田門外ノ変』と同じものも感じたり…。
私個人としては、“個”というものを捨てて使命に命を懸けるという精神性は好きではないのですが、やはりこういうテーマは日本人には受けるんでしょうね。
しかし、そういう精神性にちょっとモヤモヤさせられつつも、映像とストーリーから醸し出される圧倒的な存在感から、スクリーンに釘付けにさせられてしまったパワフルな作品でした。
やっぱり、三池崇史はうまいなあ。。。
<STORY>
財界の大物・蜷川隆興の幼い孫娘が、暴行され惨殺された。容疑者の清丸国秀は少女暴行殺人で8年前にも逮捕されていた。やがて日本の大手全国紙のすべてに、見開き全面で「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします」という新聞広告が掲載された。それは蜷川隆興が、清丸を殺して欲しいと依頼するものだった。恐れた清丸は福岡県警に出頭。警視庁警備部警護課のSP・銘苅と白岩ら5名が清丸を警視庁まで護送することに…。
<Cheeseの解説>
「BE-BOP-HIGHSCHOOL」の漫画家・木内一裕の小説デビュー作「藁の楯」を鬼才・三池崇史監督が映画化した本作。
幼い少女を暴行して殺し、10億円の賞金を懸けられた殺人犯・清丸国秀を九州から東京まで護送することになった警察官たちの道程と葛藤を描いています。
彼を護送するのは、警視庁警備部警護課のSP・銘苅一基と白岩篤子、そして警視庁捜査一課の奥村武と神箸正貴、福岡県警の関谷賢示の5名のチーム。
それぞれ、それほどに信頼関係を築けているわけではない5名が、腹を探りあいながら任務をこなすことになるのです。
彼らが護送することになったのは、幼い少女を暴行して殺すという、人の風上にも置けない犯罪を犯したクズのような人間。
そんなクズのような清丸を命を懸けて守る必要があるのか、殺した方がいいのではないか、しかも10億円が手に入るとなったら…。
この殺人犯・清丸国秀を演じる藤原竜也が、本当にしばき倒したくなるようないやーな雰囲気で、幼女好きな自己中心的男を演じています。
観客の誰もが「この男は殺してよし!」と思うような自己中心的な変態男で、こんな男を守る価値があるのかという疑問をリアルに突き付けてくるのです。
そんな清丸を、10億円目当てに多くの人が襲ってきます。
それぞれに、金に困っていたり、復讐を目論んでいたり、様々な理由で清丸に執念を燃やす一般人。
清丸のようなクズを、そんな一般人から守る必要があるのか。
清丸を守るために、自分が命を投げ出したり、清丸を襲って来る人びとに銃を向けてもよいのか。
なんのために、自分は清丸を守るのか。
自分は何を貫くのか…。
目前の利益と自分の信念との間で揺れ、さらに清丸のあまりにも自己中心的な言動に憤りながらも、自分のなすべき言動を決定していく銘苅の姿は、本当にサムライのよう。
それも、お家のために自分の感情を押し殺して腹を切ってしまう、そんなサムライの姿です。
『一命』の市川海老蔵みたいに、爆発するのかと思いきや。。。
そういう意味では、“大儀のために自分を殺す”、“自分個人の意志より大儀が優先される”、そんなタイプの主人公が活躍する、三池崇史監督作には珍しいタイプの作品のように思います。
『藁の楯 わらのたて』(125分/日本/2013年)
公開:2013年4月26日
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて
原作:木内一裕
監督:三池崇史
出演:大沢たかお/藤原竜也/松嶋菜々子/岸谷五朗/伊武雅刀/永山絢斗/余貴美子/山崎努
公式HP:http://waranotate.jp
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