【映画レビュー】恋妻家宮本
結婚後27年を経て、息子の巣立ちとともに訪れる夫婦の危機を、阿部寛と天海祐希という人気50代俳優を主演に迎えて描いた映画『恋妻家宮本』。
いわゆるミドルエイジクライシスものの一種とも言える本作、“エンプティ・ネスト(子供が巣立った後の空っぽの巣)”で二人が再び夫婦になるための葛藤を描いています。
なんでもない日常を描いた小品ではありますが、なんでもないからこそ楽しめる、ぜいたくな作品です。
<STORY>
結婚して27年になる宮本陽平・美代子夫婦。息子の正が結婚して福島へ引っ越すこととなり、初めての夫婦水入らずの暮らしが始まる。初めての二人きりの夜、陽平は本棚から美代子の署名捺印の入った離婚届を見つけてしまう。何も心当たりがない陽平は、オロオロするばかり。勤務先の中学校でも生徒の問題をうまく助けられず、「先生って教師に向いてない」とキツい言葉を投げられる。悩んだ陽平は、勢いで美代子に離婚届のことを問い質すが…。
<解説>
「純と愛」、「家政婦のミタ」などの脚本家として知られる遊川和彦。実はもともと映画監督志望だったということで、本作では満を持して映画監督デビューをしています。
やはりテレビ畑が長いせいか、演出はどこかテレビ的。わかりやすく、親切ではあります。
子どもがいなくなり二人きりになった夫婦が、なぜ自分たちが夫婦になったのか、相手は自分を愛しているのか、自分は相手を愛しているのかを問い直す過程を描くこの物語。
主人公夫婦のほかにも、喧嘩の絶えない40代夫婦、新婚の20代夫婦、30歳を目前にした結婚前の不安定な女性、夫と死別し嫁に辛く当たる70代女性など、“結婚”周辺のさまざまな段階にある登場人物たちが登場し、結婚のさまざまな段階を見せてくれます。
結婚経験者には、きっといろいろ「あるある!」と思わせられるセリフやシーンなどがあるかもしれません。
この物語、結婚、夫婦というものが大きなテーマなわけですが、もうひとつ、“ファミレス”が大きな役割を果たしています。
実は、この映画の原作は、重松清の小説「ファミレス」。物語の冒頭から最後まで、ファミレスが重要な舞台として登場します。
確かに、現代の一般的な日本人にとって、ファミレスとはまるで家の続きのような、便利な場所。
映画の中では、幸せな家族との食事の場だったり、ただおなかを満たすための場所だったり、出会いの場であったり、重要な話をするための場所だったりと、さまざまな日常生活の一シーンにファミレスが登場しています。
夫婦やファミレスというものは、ある時は当たり前のものと思っているけれど、それがなくなってしまうと「明日からどうすればいいの?」と困ってしまうものなのかもしれません。
『恋妻家宮本』(117分/日本/2017年)
公開:2017年1月28日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:重松清
監督・脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
出演:阿部寛/天海祐希/菅野美穂/相武紗季/工藤阿須加/早見あかり/奥貫薫/佐藤二朗/富司純子/入江甚儀/佐津川愛美/浦上晟周/紺野彩夏/豊嶋花/渡辺真起子/関戸将志/柳ゆり菜
Official Website:http://www.koisaika.jp/
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