【映画レビュー】英国王のスピーチ / The King’s Speech
誠に個人的な予想ですが、今年のアカデミー賞の監督賞、作品賞、主演男優賞はこの映画『英国王のスピーチ』ではないかと思ったりしています。
アカデミー賞では、監督賞、作品賞、主演男優賞ほか、最多12部門にてノミネートされている本作。
王室の話、というと、なんだか御大層な歴史もののように思いますが、どちらかと言うと、コンプレックスを多く抱えた一人の男が、努力しながらコンプレックスと戦い、克服していく物語です。
と同時に、彼を支えた家族の物語であり、彼を支えた友人の物語でもあります。
“友情”“努力”“勝利”、そして“家族愛”
この作品で描かれているのは、正にそれ。
“ノブレス・オブリージュ”から逃げず、真正面から立ち向かい、国王として自信たっぷりにバルコニーに立つジョージ6世の姿に、感動せずにはいられませんでした。
※本作は第83回アカデミー賞アカデミー賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の4部門でオスカーを獲得しました。
STORY
英国王・ジョージ5世の次男、ヨーク公爵は、幼い頃から吃音で悩んでいた。何をやっても治らず、オーストラリア人のスピーチ矯正専門家・ローグに治療を依頼することに。ローグは公爵を“バーティ”という親しい人のみが呼ぶ名で呼び、型破りな治療を実施する。その頃、ジョージ5世が崩御し、公爵の兄・エドワード8世が王位を継ぐが、“王冠をかけた恋”のため、1年足らずで退位。バーティがジョージ6世として、王位を継ぐこととなる…。
解説
本作の主人公・英国王ジョージ6世は、現在の英国女王エリザベス2世のお父上。
このジョージ6世のこと、浅学にして、私はまったく知りませんでした。
アメリカ人女性ウォリス・シンプソンと“王冠をかけた恋”に落ち、王位を捨てたエドワード8世は割と有名ですが、その弟のジョージ6世はなんだか地味な存在ですよね。
このジョージ6世(わかりづらいので、以下バーティと記します)、現在はイギリス国民なら誰でも知っている存在ですが、即位前には「史上もっとも知られざる国王」と呼ばれたそう。
吃音症や体力面での不安から、彼は国務にも熱心ではなく、影の薄い存在だったようです。
そのバーティは、幼い頃に無理やりに左利きを右利きに矯正され、X脚の矯正具を無理やりに着けられ、そういったことが原因で吃音症になったようです。
厳しい父王・ジョージ5世と闊達な兄・エドワード8世へのコンプレックスを抱え、内気な性格の青年に成長するのです。
しかし、バーティは妻と友人に恵まれました。
明るい性格の妻・エリザベスと、彼女の見つけていたスピーチ矯正の専門家、ライオネル・ローグの根気強い治療により、彼は吃音症を克服していくのです。
この作品は、自身に課せられた責務を果たそうと努力する一人の人間、そして彼を支えようとする家族と友人の物語です。
バーティが大きな責任から逃げずに、懸命に努力をして責務を果たそうとする姿が、観客の心を打つのだと思います。
バーティを支えるオーストラリア人のライオネル・ローグは、実在する人物。
ですが、これまでは資料が乏しく、どのような人物かは知られていなかったそうです。
しかし、本作撮影の二か月前に、スタッフがライオネル・ローグを探し出すことができ、彼が持っていた様々な資料を見つけることができたとか。
その資料を元に、脚本は書き直され、本作のお茶目でユーモアのあるローグ像が出来上がったそうです。
なんというセレンディピティ…。こんなことってあるんですね。
バーティを演じたコリン・ファースは、アカデミー賞主演男優賞は確実視されていますが、個人的にはローグを演じたジェフリー・ラッシュのお茶目さも良かったなぁ。
本当に、2011年必見の映画と言える一作です。
別コラム
作品情報
『英国王のスピーチ』(118分/イギリス=オーストラリア/2010年)
原題:The King’s Speech
公開:2011年2月26日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国にて
監督:トム・フーパー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:コリン・ファース/ジェフリー・ラッシュ/ヘレナ・ボナム=カーター/ガイ・ピアース/ティモシー・スポール/デレク・ジャコビ/ジェニファー・イーリー/マイケル・ガンボン
公式HP:http://kingsspeech.gaga.ne.jp/
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