【映画レビュー】ゴーストライター / The Ghost Writer
名匠ロマン・ポランスキー監督が、2010年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀監督賞)を受賞した話題の映画『ゴーストライター』。
元ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナンが元英国首相役を、そして元オビ・ワン・ケノービのユアン・マクレガーが、その元英国首相のゴーストライターを演じています。
ピアース・ブロスナンの演じた元英国首相、アダム・ラングは、トニー・ブレアがモデルだという説も有力なのですが。。。
果たして真相はいかに?
そうそう、「セックス・アンド・ザ・シティ」シリーズのサマンサでおなじみ、キム・キャトラルが、セクシー美人秘書・アメリア役で出演していたりというお楽しみも。
そして、往年の映画ファンには、1915年生まれの名優イーライ・ウォラック(『荒野の三悪党』、『ゴッドファーザー PartIII』)が1シーンのみ出演しているのも、見逃せないポイントかもしれません。
STORY
元英国首相アダム・ラングの自伝のゴーストライターを依頼された、ある英国人ライター。前任者が自殺したことを知り、気が進まないながらも、彼はラングの暮らす米国東海岸にある孤島を訪れた。しかし、着任早々、ラングに国際戦犯の容疑がかけられてしまう。緊張状態の中、ラングや彼の妻・ルースの協力を受け、原稿のリライトを行うライター。やがて彼は、前任者の残したメモを発見。そのメモを調べる内、彼はラングの過去の秘密を知る…。
解説
この作品の原作、脚本を務めたロバート・ハリスは、政治専門のジャーナリストとして、BBCに勤務していた人物。
彼は、トニー・ブレアが英国首相になる前から就任後まで、トニー・ブレアの傍にいたという履歴を持っています。
それゆえ、本作の原作である小説「ゴーストライター」が出版された時から、本作のアダム&ルース・ラング夫妻は、トニー・ブレア&シェリー・ブース夫妻なのではないかとの憶測がなされました。
映画を観て、そして世界情勢の流れを考え合わせると、「確かに、こういうこともありそうだよね…」と思ってしまいます。
まあ、陰謀論と言えば陰謀論なんですが。
本作は、そんな“実際にありえそう”な政治の世界にある陰謀を描いたサスペンス。
曇り空ばかりが続く陰鬱な島を舞台に、あるライターが元英国首相・ラングの自叙伝のリライトを進めて行きます。
彼の前任のゴーストライターは事故死しています。
なので、ライターは彼の原稿を読み、ラングへのインタビューを重ね、ラングの妻やラングの秘書と行動を共にすることで、ラングの人となりを知り、自叙伝を新たに構築していくのです。
ラングの素顔や性格、妻との関係性を知り、妻との仲を深めていくライター。
そして、彼は前任者の残した手がかりを独自に調べ、ある結論に達するのですが…。
小さな証言や細かい描写、あやしい登場人物の行動などを重ねて描き、新たな事実がどんどんと判明していく描写は、まるでサスペンス映画のお手本のよう。
そして、最後の証言をもとに、すべての真実が明らかになり、エンディングに続くまでの一連の展開は、ポランスキー監督の監督としての素晴らしい手腕を、思い知らせてくれました。
それでいて、英国らしい皮肉やユーモアが効いているあたりも面白いです。
というよりも、あのロマン・ポランスキーが、MI6の諜報員であるジェームズ・ボンドのイメージの強いピアース・ブロスナンを起用して某国の諜報機関の陰謀を描く…という、この映画の構造そのものが、シニカルというか、皮肉たっぷりです。
この映画の製作国を見ると、フランス、ドイツ、イギリスの三国で、アメリカは入っていないんですよね。そりゃそうか。
一般庶民にはなかなか知り得ない“政治スキャンダルの真相”、“世界的陰謀の顛末”を描く映画『ゴーストライター』。
現代という時代だからこそ、波瀾万丈の人生を生きる反逆児ロマン・ポランスキーだからこそ、描けたような映画です。
ヨーロッパ人一流の皮肉と、洗練された反乱精神を、この映画は味わわせてくれますよ。
別コラム
作品情報
『ゴーストライター』(128分/フランス=ドイツ=イギリス/2010年)
原題:The Ghost Writer
公開:2011年8月27日
配給:日活
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか全国にて
原作・脚本:ロバート・ハリス
監督:ロマン・ポランスキー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ユアン・マクレガー/ピアース・ブロスナン/キム・キャトラル/オリヴィア・ウィリアムズ/トム・ウィルキンソン/ティモシー・ハットン/ジョン・バーンサル/デビッド・リントール/ロバート・パフ/イーライ・ウォラック/ジェームズ・ベルーシ
公式HP:http://ghost-writer.jp/
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