【映画レビュー】許されざる者
第65回米国アカデミー賞にて作品賞ほか4部門を受賞したクリント・イーストウッド監督・主演作『許されざる者』(原題:Unforgiven)。
この作品を李相日が企画し渡辺謙主演で日本でリメイクしたのが、この映画『許されざる者』です。
unforgiven【形】…許されていない
原題のUnforgivenは、「許されていない」という意味の形容詞。
ただ、このリメイク作品と原作は“誰が”“誰を”許されていないと考えているのかが、決定的に違うように思います。
これはやはり、キリスト教を基本としているアメリカ文化と、“自罰”などの意識の強い日本文化の違いなのでしょうかね。。。
<STORY>
幕府軍の生き残りである釜田十兵衛は、極寒の僻地で幼子と暮らしていた。そんな十兵衛のもとに、かつての幕府軍の仲間である馬場金吾がやって来た。鷲路の町で女郎が開拓民に顔を切り刻まれ、その女郎仲間が犯人の開拓民に千円の懸賞金を懸けたというのだ。刀を捨てた十兵衛だが、子どもたちの冬支度の金を稼ぐため、金吾と、アイヌの血をひく五郎と共に鷲路の町へ向かう。その町は、大石一蔵という冷酷な警察署長が支配していた…。
<解説>
クリント・イーストウッドが演じたウィリアム・ビル・マニーに対する釜田十兵衛を渡辺謙が、モーガン・フリーマンが演じたネッド・ローガンに対する馬場金吾を柄本明が、ジーン・ハックマンが演じたリトル・ビル・ダゲットに対する大石一蔵を佐藤浩市が演じているこの作品。
基本的なストーリーや設定は、驚くほど原作とそっくり。
よくもまあ、西部劇の設定をここまで違和感なく日本に置き換えられたものだと、ちょっと感心してしまうほどです。
本作の舞台は、明治初頭の日本。
旧幕府軍に仕え、“人斬り十兵衛”と恐れられた男が主人公です。
彼は、明治維新によって新政府軍から襲われる立場となります。
かつて人を斬りまくった十兵衛は、“蝦夷”と呼ばれる北海道の地へ逃げ、そこでも追っ手の新政府軍兵士たちを殺しまくり、なんとか生き延びていきます。
そこで、アイヌの女性と出会い、二人の子を設け、刀を捨てて生きる決心をしたのです。
そのアイヌの女性が死んでも、十兵衛は変わりませんでした。
何もない極寒の地で、二人の子どもと貧しい生活をしながら、ひっそりと生きてきました。
そんなところに、「女郎の顔に傷をつけた二人の開拓民を殺せば1000円の賞金」という報せを持って、かつての旧幕府軍の生き残り仲間・馬場金吾がやって来ます。
そして重兵衛は「二度と人を斬らない」と誓ったはずの刀を手に、話を持ってきた金吾、アイヌの血をひく若者・五郎(柳楽優弥)と共に再び人斬りの旅に出るのでした。。。
ストーリーは、ほぼ原作のとおり。
しかし、五郎の存在と、結末が大きく違っています。
寡黙な十兵衛は、なぜその旅に出たのか、その道を選んだのか、はっきりと理由を語りません。
ただ、“許されざる”ことがあり、そういう結末に至ったのでしょう。
この結末は、やはり“切腹”、“自刃”などの文化を持つ、ラスト・サムライが主人公であるゆえなのでしょう。
李相日監督は、クリント・イーストウッドの名作映画『許されざる者』を見事に換骨奪胎し、新たな意味を盛り込んだ、日本流『許されざる者』を作り上げたと言えると思います。
『許されざる者』(135分/日本/2013年)
公開:2013年9月13日
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場:全国にて
監督・アダプテーション脚本:李相日
オリジナル脚本:デイヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
音楽:岩代太郎
出演:渡辺謙/柄本明/佐藤浩市/柳楽優弥/忽那汐里/小池栄子/國村隼/近藤芳正/滝藤賢一/小澤征悦/三浦貴大
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/yurusarezaru/
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