【映画レビュー】トゥモローランド ／ Tomorrowland

「スペース・マウンテン」や、「スター・ツアーズ」、「バズ・ライトイヤーのアストロ・ブラスター」など、人気のアトラクションが立ち並ぶ東京ディズニーランドのエリア・トゥモローランド。
近未来のような世界観を見せるこのエリアと同じタイトルを持つ映画『トゥモローランド』が公開されます。

ウォルト・ディズニーが夢見ていた実験的未来都市・エプコット（EPCOT: Experimental Prototype Community Of Tomorrow）をそのまま映像化したような世界観で、あんな世界に住んでみたいと思う人も多いはず。
子どもの頃に夢見ていたような、“夢の未来”を感じさせてくれつつも、大人になってしまった苦さのようなものも感じさせてくれる、アドベンチャー・ムービーです。

ウォルト・ディズニー社の保管庫に眠っていた、ウォルト・ディズニーが残した資料（映画のプロットや雑誌の切り抜き、地図、パズルなど）をもとに監督のブラッド・バードや脚本家のデイモン・リンデロフが膨らませていた物語が、この映画『トゥモローランド』として結実しました。

この物語の舞台となっているのは、1964年、そして現代。
未来を夢見る力を持った若者たちが、“トゥモローランド”へとたどり着き、未来を作り出していく姿を描いています。

この“トゥモローランド”とは、発明家・起業家のトーマス・エジソン、テスラコイルなどで知られる発明家のニコラ・テスラ、「海底二万里」などの作者であるSF作家のジュール・ヴェルヌ、エッフェル塔を作った建築家ギュスターヴ・エッフェルらが所属していたという天才たちが作った組織「プルス・ウルトラ」が作ったという、「すべてが可能になる世界」。
白を基調とした未来感を感じさせる世界で、ワクワクするような、美しく未来的な世界が広がっています。

未来を夢見て行動しようとする女子高生のケイシー・ウォーカーは、あるバッジを手にしたことから、このトゥモローランドの存在を知ります。
そして、不思議な少女・アテナと、かつての天才少年で今はやさぐれた中年となったフランク・ニュートンらに導かれ、トゥモローランドを目指します。
しかし、かつての理想郷だったトゥモローランドは、荒廃し、かつての輝きを失っていました。

トゥモローランドはなぜ輝きを失ったのか？
そして、なぜケイシーはトゥモローランドに来ることになったのか？

かつて理想に燃えていた若者たちは、今は世界を憂い、事態を改善しようとする勇気を失っているという現実。
そして、未来を夢見る今の若者でさえ、その思考力を奪われそうになっている現実。

ブラッド・バード監督とデイモン・リンデロフは、そんな現実世界に警鐘を鳴らそうと、この映画『トゥモローランド』を作ったのかもしれません。
言わば、この作品を観る多くの若い観客たちがケイシーであり、この映画がアテナだったりするのかも。

未来に大きな希望を託し、エンターテインメントの世界を大きく発展させた天才、ウォルト・ディズニー。
彼の過去の資料にインスパイアされ、若いクリエイターたちが未来への希望を形にしたのが、この映画『トゥモローランド』なのです。

ただ、まあ、惜しいのは…、過去の天才たちの才能と遊び心と、未来の若者たちへの期待は感じられるのですが、現在のクリエイターやタレントたちのパワーがあまり感じられないことでしょうか。
若い者にバトンを渡す前に、現在のクリエイターも頑張らなくちゃ、未来は明るくない気がするよ。。。