【映画レビュー】リトルプリンス 星の王子さまと私 ／ Le Petit Prince

ある9歳の女の子は、名門校の学区に引っ越してきた。お母さんの言う通り、良い人生を送るために勉強ばかりしていた彼女は、ある日、隣に住む変わり者のおじいさんと知り合いになる。かつて飛行士をしていたおじいさんは、砂漠で出会った“星の王子さま”の物語を聞かせてくれた。王子さまの話をきっかけに、おじいさんと心を通わせた女の子だが、二人が仲良くしていることがお母さんにばれ、おじいさんと会うことを禁止されてしまう…。

この『リトルプリンス 星の王子さまと私』には、二つのアニメ技法が使われています。
一つは、サン＝テグジュペリの「星の王子さま」の世界を再現する、まるで絵本のようなストップモーションアニメ。
温かみのある映像で、手作り感を感じさせます。

もう一つは、主人公の女の子が生きる現実の世界を描く、CGアニメ。
そばかすまで再現したリアルな質感ながら、色彩や遊びの少ない無機質な映像で、女の子が生きているドライで余裕のない世界を表現しています。

この映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』は、無機質でドライな世界で、ただ目標をクリアするためだけの毎日を生きていた女の子が、元飛行士のおじいさんと出会い、星の王子さまの話を聞くことで、変化していく物語です。
“より良い将来”のために現在を無機質に生きてきた女の子が、星の王子さまの物語と出会うことにより、愛情を知り、思いやりを育て、新しい何かを作る喜びを覚え、自立心や自発心を得て変わっていくのです。

そうやって女の子が変化し、成長した結果、物語は大きく変わります。
女の子だけではなく、女の子のお母さん、飛行士のおじいさん、そして“物語”の登場人物の未来をも変えていくのです。

マーク・オズボーン監督は「星の王子さま」という偉大なる物語を使い、愛情が人を育てること、クリエイティビティがより良い世界を作ること、偉大なる物語が人に大きな影響を与えることを表現したのではないでしょうか。
それは、「星の王子さま」をはじめとする、先達たちが遺してくれた様々な素敵な物語に影響を受け、成長してきたアーティストが、次代のアーティストに贈るメッセージのひとつなのかもしれません。
作品の権利を持つサン＝テグジュペリ エステートが初めて認可したというのも納得できる、クリエイティビティに溢れる一作です。