【映画レビュー】アーティスト / The Artist
サイレント期の映画製作現場、とりわけ映画俳優たちへのリスペクトを表したモノクロのサイレント映画『アーティスト』。
モノクロの美しい映像の中、セリフは最低限がインタータイトル(中間字幕)で表現されるだけなのに、主人公たちの気持ちが鮮やかに伝わってきます。
俳優たちの表情、身体表現がいかに雄弁に物語を語るのかを気付かせてくれる、映画の可能性を広げてくれた一作です。
<STORY>
1927年、ハリウッドの大スター、ジョージ・ヴァレンティンは新人女優・ペピーと出会い、「女優には特徴が必要だ」とペピーにつけぼくろを描いてみせた。その頃、ハリウッドはサイレントからトーキーへの移行が始まっていたが、トーキーへの出演を拒否したジョージはスタジオから干されてしまう。対するペピーはそのキュートな笑顔とつけぼくろの魅力でスター街道を上って行く。自身が監督・主演した映画も失敗し、ジョージは落ちぶれていく…。
<解説>
21世紀初頭に生きるフランス人映画監督であるミシェル・アザナヴィシウスが、フランス人俳優であるジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョを主演に、20世紀初頭のアメリカ・ハリウッド映画の世界をモノクロ&サイレントというスタイルで描いた本作。
サイレント、モノクロという“昔ながらの方法”を使っていることで、“俳優の演技の重要性”、“目に見えるものの重要性”、“物語のわかりやすさの重要性”、そして“音の重要性”を原題の観客たちに気付かせてくれます。
特に、音楽が鳴ることによって得られる効果、音楽が鳴らなくなることによって得られる効果、人間の息づかいが伝わってくることによって得られる躍動感など、“音の重要性”をこの映画で教えられた気がします。
この映画の主人公・ジョージは、自分は芸術家(アーティスト)だと自負し、「ガチャガチャうるさく映画ではない」とトーキー映画への出演を拒否します。
そして、スタジオからは“古くさい俳優”というレッテルを貼られ、干されてしまうのです。
しかし、新人女優のペピーは、“新しい顔”としてトーキー時代を代表する女優になっていくのです。
古いものを大事にするあまり、新しいものを拒否するジョージと、新しいものを柔軟に受け入れて成長して行くペピー。
この二人がハリウッドの新旧を象徴しているとも言えます。
2Dという技術と3Dという新技術が拮抗している今、作られるのに相応しい作品といえるでしょう。
別コラム:オトコに見せたいこの映画『アーティスト』
『アーティスト』(101分/フランス/2011年)
原題:The Artist
公開:2012年4月7日
配給:ギャガ
劇場:シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて
監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン/ベレニス・ベジョ/ジョン・グッドマン/ジェームズ・クロムウェル/ミッシー・パイル/ペネロープ・アン・ミラー/マルコム・マクダウェル/ビッツィー・トゥロック/ベス・グラント/ニーナ・シマーシュコ/ベイジル・ホフマン/ベン・カーランド
公式HP:http://artist.gaga.ne.jp/
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