【映画レビュー】タイピスト！ ／ Populaire

女性の社会進出も進んできた1950年代。
この映画の主人公・ローズは、特に能力もないくせに最新流行の職業・秘書になろうと夢見る田舎の女の子です。

いわゆる、オシャレな最新の職業に憧れる、ミーハーな女の子。
まあ浅はかなギャルでもあるわけですが、かつては能力もないくせに無根拠な自信を持ち、田舎出身、地方大学出身でコネも経験もないくせに、マスコミや広告代理店を志す女子大生だったりした私には、なんだか他人とは思えなかったり。
こんなローズに共感できる女性は、けっこう多いのではないでしょうか。

そんな浅はかなローズですが、仕事の能力はないけれど、取り柄がひとつありました。
実家の雑貨店の売り物だったタイプライターでタイピングの訓練をしていたことから、人より速くタイピングすることができたのです。
そこが保険会社の社長（と言っても社員は社長しかいない零細会社ですが）・ルイの目に止まり、タイプライター早打ち大会に出ることになります。

そこで、ルイと共に苦しい訓練を重ね、大会を勝ち進んで行くのですが、なんだかんだ言ってイケメン社長のルイとの間に、恋愛感情が芽生えてきます。
でも、ルイにとっては彼女は部下であり、生徒。
素直に恋人関係になることもできず、二人は好きあいながらもなかなか素直になることができず…。

そんな、素直になれない二人の恋と勝利への道をキュートに描いたこの物語。
主人公のローズのファッションやヘアメイク、お部屋の美術などもレトロでキュート。
オードリー・ヘプバーンのポニーテールを取り入れたり、50年代の雑誌を参考に衣装を作ったりしているそうです。

さらに、ビリー・ワイルダー監督作品やジャック・ドゥミ監督作品、ジャン＝リュック・ゴダール監督作品などへの多くの名監督作品へのオマージュを散りばめているので、映画好きな方は、思わず観ていてニヤリとしてしまうことでしょう。
レジス・ロワンサル監督は、ジェーン・バーキンのPVを手がけたり、音楽関係のドキュメンタリーを手がけてきたというだけあって、印象的な映像とカラフルな色彩、ポップな音楽が見事にマッチしています。

恋に仕事にタイプライターに、一生懸命頑張るキュートなお仕事ガールの姿に、観る人誰もが幸せな気分になれるような、チャーミングでスタイリッシュな映画です。