【映画レビュー】ピクセル ／ Pixels

ギャラガ、アルカノイド、パックマン、センチピード、ドンキーコングなど、80年代を席巻したゲームたち。
このゲームが立体化され、3Dで地球を襲ってくる映画『ピクセル』。

小さい頃、ゲームを禁止されていてあまりゲームにくわしくない私でも、思わず「懐かしい！」とニヤニヤしてしまうような、超メジャーゲームのキャラクターたちが、ゲーム会社や国の垣根を変えて登場する、かつての子どもたち大喜びの映画です。

アダム・サンドラー、ピーター・ディンクレイジ、ジョシュ・ギャッドら、かつてはゲームオタク、今ではナードとしていけてない日々を送る中年たちが、ゲームキャラたちから地球を救うために立ち上がる姿を描く本作。

33年前に地球から宇宙に向けて発せられた“地球を代表する現代カルチャー映像”を見て、宣戦布告と勘違いしたエイリアンたちが、ギャラガ、アルカノイド、センチピード、パックマンといったゲームキャラに姿を変え、地球を襲ってきます。
そして、そのゲームで先に3勝しなければ、本格的な軍隊を送り込み、地球を滅ぼすというのです。

ケヴィン・ジェームズ演じる親友のアメリカ大統領から助けを求められたサム（アダム・サンドラー）は、かつて神童と呼ばれたゲーム仲間・ラドロー（ジョシュ・ギャッド）、かつてのゲーム世界チャンピオン“Fireblaster＝火炎噴射男”・エディ（ピーター・ディンクレイジ）たちとともに“アーケーダーズ”として立ち上がり、屈強なアメリカ兵たちを指揮し、ゲームキャラたちに立ち向かうのです。

それにしても、このエイリアンたちの持つ化学技術、相当なものです。
地球から送られた短い映像だけで、そのゲームの全容を理解し、立体的に（なんとゲームのバグまで）再現してしまうのです。

さらに、地球に攻めてくるときも、ちゃんとルールを通知し、そのルール内で地球側が勝利すれば撤退する、と約束するのですから、ずいぶん紳士的。
このエイリアンたちの文明にとっては、地球の文明などほぼ未開に近く、本気で相手にするほどの相手ではないのかもしれません。

そんな上から襲ってくるエイリアンに対し、地球の戦闘ルールなどはほぼ通用しません。
屈強な米兵たちはあっさり撤退し、フィールドに立つのは“アーケーダーズ”のみ。
ゲームしか能のないルーザーだった中年たちが“アーケーダーズ”として、地球を守るのです。

かつて1990年の『ホーム・アローン』で、自分なりのやり方で泥棒たちから家を守るケビン少年の戦いを描いたクリス・コロンバス監督、本作でも、自分なりのやり方で、一見勝ち目のない戦いに勝利していくおっさんたちを描いています。

考えてみれば、1990年から25年経った今、可愛かったマコーレー・カルキンくんも、ヨゴレ気味の35歳。
『ホーム・アローン』を純粋に楽しんでいたかつての少年少女たちも、すっかりおじさん、おばさんになっているわけですね。
この映画を子どもたちと一緒に観にいく、生活に疲れたパパママたちと、大きくくくれば同世代なのかもしれません。

そう考えてみると、この映画『ピクセル』、クリス・コロンバスからのかつての少年少女へのエールのようにも思えてきます。
「今はイケてないかもしれないけど、自分なりのやり方で輝ける日がきっとくるよ。中年になっても、希望を捨てず頑張れ！」的な、ね。

『グーニーズ』（1985・脚本）、『ホーム・アローン』（1990・監督）、『ハリー・ポッターと賢者の石』（2001・製作／監督）、『ナイト ミュージアム』（2006・製作）と、子どもも大人も一緒になって楽しめる作品を作り続けているクリス・コロンバス監督。
本作でも、80年代の8ビットのゲームキャラクターたちを立体化した新しい映像で、観客を楽しませ、ワクワクさせてくれます。
80年代にファミコンと共に子ども時代を過ごした大人たちならきっと童心に返って楽しめる一作と言えるでしょう。