【映画レビュー】74歳のペリカンはパンを売る。

大好きなパン屋さんの一つ「ペリカン」
田原町にある編集プロダクションに出入りしている頃、よくこのパン屋さんでロールパンを購入していました。
不思議なやわらかさともっちり感、小麦の美味しさが感じられる、昔ながらのパン屋さんなのです。

この「ペリカン」がドキュメンタリー映画になったということで、さっそく観て来たのですが…。
映画『74歳のペリカンはパンを売る。』、ペリカンファンとしては、ちょっと残念な出来でした。
ドキュメンタリーっていうよりは、ファンムービーみたいだったな。。。

 
<STORY>
食パンとロールパンしか扱わない、浅草の老舗パン屋「ペリカン」。1942年に創業され、70年以上の歴史を持つこのパン屋では毎朝4時から職人がパンを作り始め、朝8時にはパンを求める客が店の前に列を作っている。パンを2種類しか作らないのは、二代目店主である渡辺多夫氏のこだわりだ。今は多夫氏の甥である渡辺陸氏が四代目店長を勤めている。カメラは「ペリカン」関係者やファン、製パン業関係者らがペリカンについて語る様子を追う。

 
<解説>
『PORTRAIT ポルトレ』の監督である内田俊太郎、プロデューサーの石原弘之がクラウドファンディングにて資金を集め制作した映画『74歳のペリカンはパンを売る。』
観ていて、ペリカンに対する関係者やファンたちの愛が強く伝わって来る作品です。

とはいえ、これがドキュメンタリー映画となると、ちょっとものたりない。。。

もちろん製作者たちもペリカンを愛しているのは伝わって来るんですけど、言ってみればそこにあるのは気持ちだけなのです。
画面に映るのは、関係者やファンたちがパンへの愛を語るインタビュー映像、そして日本情緒を感じさせる浅草の風景。
ドキュメンタリーにとって重要な、ファクト部分がすっぽりと抜け落ちているのです。

ドキュメンタリー映画だというのなら、たとえば、ペリカンの売り上げ規模や年間に製造するパンの量、他店舗との比較などがないと、「ペリカン」のすごさが客観的に伝わりません。
また、ペリカンで働く人に関しても、描写がものたりない…。
四代目店長の渡辺陸氏、40年以上もペリカンでパンを作り続けているパン職人・名木広行氏のみにフィーチャーされているため、「ペリカン」に何人スタッフがいてどういうシフトで働いているのか、まったくわからないのです。
パン職人の人数やシフト、販売スタッフの人数やシフトなどがわかれば、「ペリカン」がどういうお店でどんな利用のされ方をしているのか、わかるはずなのにね。。。

さらに、「ペリカン」のパンの美味しさを伝えたいのであれば、業界人のファンの長々としたインタビューを映し出すより、お店を訪れる一般のお客さんの一言コメントをたくさん入れるとか、その方がよっぽど伝わってくるのにな。。。
職人さんに関しても、先代・先先代を知る名木広行氏さんの言葉だけじゃなく、若手パン職人が「ペリカン」に入った理由やここで学んだこと、パンへの思いなどを聞くことで、職人の姿が多層的に伝わって来るはずなのに。

「ペリカンってこんなにすごいんだよ!こんなに美味しいんだよ」とばかり言っているような今の状態では、本当の「ペリカン」の姿は伝わってこないし、資料的な価値なども薄い気がします。

私自身も「ペリカン」のファンであるだけに、物足りなさだけが募ったドキュメンタリー映画でした。

『74歳のペリカンはパンを売る。』(80分/日本/2017年)
公開:2017年10月7日
配給:オルケスト
劇場:渋谷ユーロスペースほか全国にて順次公開
監督・編集:内田俊太郎
プロデューサー:石原弘之
出演:渡辺多夫/渡辺陸/名木広行/伊藤まさこ/保住光男/中村ノルム
Official Website:http://pelican-movie.tokyo/

 

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