ノア 約束の舟 / Noah
旧約聖書・「創世記」の5章から10章に登場する“ノアの方舟”の物語。
誰もがよく知っている話のような気がしますが、実はみんなが知っているのはアウトラインだけで、細部を知らない人も多いような気がします。
『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が、このノアの物語を新しい解釈で映画化したのが、本作『ノア 約束の舟』です。
タイトルロールのノアを演じるのは、ラッセル・クロウ。
誰もが知っているけれど、誰もそのディテールを知らない神話的人物を、彼なりの重量感で演じています。
輝く光を泥や岩で押し固めたような“番人(ウォッチャー)”の映像や、高さ13メートル、幅22メートル、全長133メートルという巨大な三層構造の箱舟、すべてを押し流す大量の水の塊、地上を覆い尽くす限りのない洪水…。
圧倒的な質量を感じさせるリアルで壮大な映像と、深い人間ドラマで、特定の宗教だけに偏らない、普遍的な人間の“愛”を感じさせる作品です。
<STORY>
アダムとイブの子孫であるノアは、夢で神から宣託を受ける。神は堕落した人間を滅ぼすため、大洪水を起こしてすべてを地上から流し去ろうとしているのだ。ノアは三人の息子らとともに巨大な箱船の建設を始め、あらゆる種類の動物たちをつがいで集め始める。ノアの長男・セムは養女のイラと恋に落ちていた。やがて大洪水がやって来て、地上のあらゆる物を流してしまった。ノアは、残された家族たちに「自分たちが最後の人類だ」と告げ…。
<Cheeseの解説>
カインとアベルの弟・セトの子孫であるノア。
世界初の殺人者であるカインとは異なる系譜に生まれたノアは、神からの託宣を受け、大洪水に備えて箱舟をつくり、自分の家族とつがいの動物たちを乗せるのです。
実は、「創世記」に記されているノアの物語は、そんなに詳細なものではありません。
ダーレン・アロノフスキー監督は、そんな託宣を受けた“ノアの感情”に焦点を当て、「創世記」の設定にアレンジを加え、大きな葛藤のドラマを作り出しています。
夢の中で、神はノアにあるビジョンを見せます。
しかし、そのビジョンが具体的にどんな意味を持つのか、その解釈はノアに任されているのです。
「悪に染まった人間を、洪水により地上から洗い流す」
そんなビジョンを受けたノアは、言わば人類の運命を、神から丸投げされた状態。
「神は人間を滅ぼそうとしている」
そう考えたノアは、“どの人間を残すべきか”、“人間全てが死に絶えるべきか”と、大いなる悩みを抱えます。
“神の子”として、神からの託宣をそのまま受入れるべきか、
“一人の人間”として、神からの託宣を自分なりに解釈して実行すべきか、
“一人の父親”として、家族への愛を大事にするべきか…。
“神話の中の人物”というイメージだったノアですが、この作品では“一人の悩める父親”として描かれています。
強い信仰や確固たる信念を持ってはいるけれど、うまくいかない息子との関係に悩んで暴君となったり、自分の選択に苦悩して酔いどれたり、情けない男としても描かれているのです。
そういう意味では、ラッセル・クロウという人選はまさにぴったりと言えるでしょう。
『ノア 約束の舟』(138分/アメリカ/2014年)
原題:Noah
公開:2014年6月13日
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
劇場:TOHOシネマズ日劇1ほか全国にて
製作・監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー
製作総指揮・脚本:アリ・ハンデル
製作総指揮:クリス・ブリガム
製作:アーノン・ミルチャン/メアリー・ペアレント/スコット・フランクリン
音楽:クリント・マンセル
撮影:マシュー・リバティーク
出演:ラッセル・クロウ/ジェニファー・コネリー/レイ・ウィンストン/エマ・ワトソン/アンソニー・ホプキンス/ローガン・ラーマン/ダグラス・ブース/レオ・マクヒュー・キャロル/ダコタ・ゴヨ/ケヴィン・デュランド/マートン・チョーカシュ/ニック・ノルティ/フランク・ランジェラ/マーク・マーゴリス
公式HP:http://www.noah-movie.jp/
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