【映画レビュー】マネーボール / Moneyball
「もしメジャーリーグのGMがピーター・ブランドの「マネーボール理論」に出会ったら」という副題を付けたくなるような映画『マネーボール』。
ブラッド・ピットが、球界の常識を覆し、メジャーリーグの弱小球団オークランド・アスレチックスを低予算で常勝軍団に変えて行くゼネラル・マネージャーを演じています。
野球がモチーフになっている映画ではありますが、ここで描かれているのは、自分の信念の元に、イノベーションを起こしていく男の姿。
野球やメジャーリーグに興味がない人でも、きっと興味深く観られると思います。
STORY
メジャーリーグ球団、オークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンは財政難のため、せっかく育てた選手を強豪球団に引き抜かれることに苛立っていた。球団経営は苦しく、競合球団の三分の一しか選手に年俸が払えない。そこで彼は、統計データを使って選手の将来的価値を予測する「マネーボール理論」を導入。イェール大卒のピーター・ブランドと共に、反対する人びとを押し切り、チームの改革を進めていく。
解説
ブラッド・ピットが演じるビリー・ビーンは実在の人物。
学生時代から頭脳明晰、スポーツ万能で、野球だけではなく、アメフトのプロからも注目されていたそうです。
大学進学かメジャー入りか悩んだものの、高額な契約金にひかれたこともあり、ニューヨーク・メッツに入団しました。
しかし、鳴り物入りでメジャー入りし、若くしてスターになったものの、高慢で短気な性格も災いし、選手としては成功できませんでした。
やがて、トレードで数チームを渡り歩いた後、10年で現役引退。
監督やコーチではなく、スカウトに転職し、その後ゼネラル・マネージャーとして球団経営に乗り出したのです。
こんなビリー・ビーン、いわば“超リア充だったのに、挫折を経験した男”。と言えるでしょう。
映画では、こんなビリーが“超秀才なんだけど、ダサめで野球オタクな非リア充”ピーター・ブランドと出会い、彼の言う「マネーボール理論」を信じ、チームの改革を進めていきます。
このピーター・ブランド自体は実在の人物ではないようで、実際には数人のコンサルタント・チームがピーターの役割を担っていたようです。
しかし、“イェール大卒の「野球が大好きなんだけれど、自分は野球はできない」と信じ込んでいる野球オタク”というキャラクターをおいたことで、自信たっぷりなビリーと自信のないピーター、強気なビリーと弱気なピーターというキャラクターが好対照を見せています。
そして、ビリーがピーターを育て、成長したピーターがビリーに大切な何かを気付かせる、という構造を与え、二人それぞれの成長を観客に感じさせるのでした。
個人的には、相変わらずの猫口が可愛いフィリップ・シーモア・ホフマンがちょっとツボでした。
どう考えても元野球選手とは思えないぼってりお腹で、ビリーに抵抗し、古いやり方を貫こうとする野球監督を演じています。
最後の方、扱いがあんまりないのがちょっと作品的にも残念なところですが、「ああいう老害オヤジ、いるよねー」と観客に思わせる憎々しさと小物感がいい感じでした。
そういえば、この映画の監督を務めたベネット・ミラーは、フィリップ・シーモア・ホフマンが製作・主演を務め、アカデミー主演男優賞を得た『カポーティ』の監督。
久しぶりのタッグになったようですね。
別コラム
作品情報
『マネーボール』(133分/アメリカ/2011年)
原題:Moneyball
公開:2011年11月11日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
原作:マイケル・ルイス
監督:ベネット・ミラー
出演:ブラッド・ピット/ジョナ・ヒル/フィリップ・シーモア・ホフマン/ロビン・ライト/クリス・プラット/スティーヴン・ビショップ/キャスリン・モリス/ロイス・クレイトン/デイヴィッド・ハッチャーソン
公式HP:http://www.moneyball.jp/
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