【映画レビュー】告白
久しぶりに、映画を観て息詰まるような感覚を覚えました。
中島哲也監督の最新作である映画『告白』は、今までとは打って変わった演出手法で、観る者に衝撃を与えます。
主演の松たか子の演技も、凄まじいの一言。
2010年度のキネマ旬報ベスト10、主演女優賞は彼女が受賞するのではないでしょうか…。(と、無責任な予告をしてみる)
<STORY>
終業式の日、1年B組の教室では、担任の森口悠子が生徒たちに向かって衝撃の告白をしていた。「私の娘は、このクラスの2名の生徒に殺されました」 3歳になる森口の娘・愛美は、中学校のプールで溺死体となって発見されていたのだ。その日で学校を辞めると言う森口は、犯人の2名の生徒にある形で復讐したと告白を続けた。その後、生徒たちは持ち上がりで2年生に進級。犯人Aは登校を続けていたが、犯人Bは家に引きこもっていた…。
<解説>
2009年の本屋大賞を受賞した湊かなえの同名小説を映画化した本作。
母と子のすれ違い、母と子の密接過ぎる関係性、好意を持つ者と持たれる者の関係性が引き起こした犯罪の数々を、鮮烈過ぎる映像で描き出します。
監督の中島哲也監督と言えば『嫌われ松子の一生』、『下妻物語』など、カラフルでポップな映像作品で知られる監督。
しかし、本作ではカラフルな色彩を封印し、薄くブルーがかった映像で、やるせない現実を描き出します。
映像だけを観ると、ミュージック・ビデオのように美しいのに、空を流れて行く雲というなんでもない映像が、この映画の中に差し入れられた途端、何か不吉な、どこか心をざわめかせるような映像になるのが不思議です。
そして特筆すべきは、ふたりの母親を演じた松たか子と木村佳乃の演技。
母親の強さ、愚かさ、エゴを凄まじい迫力で演じ、物語に緊迫感を与え続けます。
そして最後に爆発させるのです。「ドッカーン!」と。
本当に、鳥肌が立ちました。
この物語には、はっきりとは姿を現さない、もうひとりの“母親”もいます。
賢く、愚かで、エゴに満ちたその母親も、大きな罰を受けるのです。
この物語に出て来る3人の母親の共通点は、「“母親”である前に“私”である」という意識が強いということでしょうか。
「シングルマザーで頑張って子どもを育てている私」
「良妻賢母として家庭を守り、息子を愛している私」
「素晴らしい頭脳を持っていて、家庭なんかにいるべきではない私」
この物語は、そんな母親に育てられた子どもたちの悲劇の物語でもあるのです。
でも、今の時代「“私”であるより前に“母親”である」というような女性など、ほとんどいないでしょう。
私には子どもはいませんが、私に子どもがいたとしても、「“母親”である前に“私”である」としか思わないと思います。
うーん、こんな映画観たら、ますます子ども産むのが怖くなっちゃうなぁ。
もちかしたら、さらに少子化を促進させかねない…、そんな恐ろしいパワーを持った映画なのかもしれません。
この凄まじいパワー、ぜひ多くの人に味わっていただきたい気がします。
後味はあまり良くないですが、確実に何かが残る映画です。
『告白』(106分/日本/2010年)
公開:2010年6月5日
劇場:全国にて
配給:東宝
監督・脚本:中島哲也
原作:湊かなえ
出演:松たか子/岡田将生/木村佳乃/西井幸人/橋本愛/芦田愛菜/新井浩文/能年玲奈
公式HP:http://kokuhaku-shimasu.jp/
東宝 (2012-03-10T00:00:00.000+09:00)
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ホステス (2010-05-26)
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