【映画レビュー】恋愛戯曲~私と恋におちてください~
劇作家の鴻上尚史が自身の舞台を監督して映画化した『恋愛戯曲~私と恋におちてください~』。
舞台版は2001年と2006年に二度上演されており、鴻上尚史が「自身の舞台の中で一番映像にしたかった」という作品だそう。
まあ、でもなんと言うのかな…。
映像と言い、演出と言い、どことなーく“昭和の香り”が漂ってくるのです。もしくは、“80年代の香り”?
なんかこう、懐かしい感じが…。
<STORY>
関東テレビの制作部に配属されたプロデューサーの向井は、あるドラマを担当することになる。しかしドラマの脚本家・谷山真由美の筆がなかなか進まない。彼女は自分が恋をしないと恋愛ドラマが書けないと言い、向井に「私と恋におちなさい」と無茶な要求を。そんな時、制作部の仕切りの悪さに業を煮やした編成部が、谷山のもとにイケメン社員の柳原を差し向けて来た。向井は柳原のナンパな作戦を尻目に、誠実に谷山に向き合うが…。
<解説>
鴻上尚史と言えば、第三舞台。
この劇団を主宰し、今から約20年前となる1987年に舞台「朝日のような夕日をつれて」で紀伊國屋演劇賞、1992年に「天使は瞳を閉じて」でゴールデンアロー賞、1994年に「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞を受賞している、演劇界の大物です。
私もお芝居は好きな方なのですが、私がお芝居をよく観るようになったのは1990年代半ば以降だったこともあり、実は鴻上尚史作品は観たことがありませんでした。
どちらかと言うと、私がよく観ていたのは第三舞台の後の時代の、劇団☆新感線や惑星ピスタチオなどの、関西小劇場の流れを汲む劇団が多かったので…。
と言う訳で、私にとってはあまり馴染みのない鴻上ワールド。
なるほど、こういう感じなのか、などと思いながら鑑賞させて頂きました。
なんだろう、深田恭子や椎名桔平はそれなりによくやっているように思うのです。
多分、監督の演出どおりなんだろうなと。
ただ、物語のテンポや演出技法が、なんともレトロな雰囲気なのですね。
映像のザラザラ感とかも、最新のデジタル映像を見なれた目には、なんだかすごく懐かしいし。
舞台との差別化を図ろうとしてこうなったのかなぁ。まあ、舞台を観ていないのでなんとも言えないのですが。
でも、さすがに第一線を生きてきたクリエイターの作品だけあって、グッとくる台詞などがいくつかありました。
一番心に残ったのは、時間がない中で「確実に受ける作品を書いてください」と言うプロデューサーに対して脚本家が言う、
「ものづくりに確実なものなんてあるの? あなた、真剣にものを作ったことがあるの?」
という台詞。
魂を削って心血を注いで作品を創り出している作家に対し、軽~く「今回もヒット作お願いしますよ」とゴマをすり、作品がヒットしなければ「アイツももうダメだな」と手のひらを返すような世間に対する作家の怒りや、クリエイターの孤独が感じられるような、いいセリフだと思います。
あともう一つ、深いなーと思ったのは、このセリフ。
「旬を過ぎた大御所ほど扱いづらいものはない」
…まったく、そのとおりだと思いました、この作品を観て。
『恋愛戯曲~私と恋におちてください~』(106分/日本/2010年)
公開:2010年9月25日
配給:ショウゲート
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、シネセゾン渋谷、新宿武蔵野館ほか全国にて
原作・監督・脚本:鴻上尚史
製作:春名慶
出演:深田恭子/椎名桔平/塚本高史/中村雅俊/清水美沙/西村雅彦/井上順
公式HP:http://www.koiochi-movie.jp/
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