【映画レビュー】星を追う子ども
『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』の新海誠監督が描くジュブナイル・アニメーション『星を追う子ども』。
観終わった後、「うーん、これがセカイ系というやつか…」と、しみじみしました。
せっかくこれだけの世界観を作り上げたのであれば、もっと大きなテーマを描けばいいいのになぁ。
日常の世界を舞台にしてでも表現できるようなテーマを言いたいがために、あれだけの異世界を作り上げ、2時間の映画にするのはもったいないと思うのです。
どこかで観たことのあるようなストーリー、なんとなく知っているようなキャラクターを描くのではなく、新海監督にしか描けない、その世界観をフルに活かした作品を作って欲しいと思うのは、映画ファンのワガママなのでしょうか。
<STORY>
山間の村で母と二人で暮らす中学生・アスナ。山奥の秘密の高台で父親の形見の鉱石ラジオを聞くのを楽しみにしていたアスナは、ある日、不思議な怪物に襲われ、シュンという少年に命を救われる。しかしその後、シュンらしい少年の遺体が発見されたと聞き、ショックを受けるアスナ。新任教師の森崎から死者を蘇らせることのできる力を持つ地下世界・アガルタの話を聞き、アガルタの入り口を見つけたアスナは森崎と共にアガルタを目指す。
<解説>
この映画は、父を幼いころに亡くし、母と二人で暮らしている中学生の少女・アスナが、地下世界・アガルタに足を踏み入れ、様々なことを体験して成長していく物語です。
物語の重要な舞台となる“アガルタ”とは、人間の有史以前に、人間たちに知恵を授けた神々“ケツァルトル”と、いくつかの人間の氏族たちが暮らす地下の世界。
星はありませんが、水もあり、光もあり、雲もあります。
その世界に、“死者に再び会いたい”という願いを抱き、足を踏み入れるアスナと森崎。
そこでアスナは、かつて地上で出会った少年・シュンの弟であるシンと出会い、様々な危機に直面するのです。
この“アガルタ”の世界観は、とても壮大です。
たぶん、スタッフたちは詳細にこの世界を設定したのだと思います。
ただ、その世界観が壮大過ぎて、観客がおいてきぼりになっている感が否めない…。
“ケツァルトル”“アルカンジェリ”といった耳慣れない単語が多く、ちょっとわかりにくいと言わざるを得ません。
登場するキャラクターたちも、どこか観たことがあるというか…。
映像だけ観ていると、「ん? 宮崎アニメの集大成?」と思ってしまうのですよね。。。
しかし、ちょっといろいろ書いてしまいましたが、その映像はとても美しいです。
特に美しいのは、自然の描写の数々。
萌え立つ山の緑や、日光のきらめき、水のゆらぎ。
写実的でありながら、しっかりと“アニメ”を感じさせるその映像の数々は、“アニメーションが持つ力”を感じさせてくれました。
だからこそ。
“キミとボク”だけの閉じた世界で完結するのではなく、その壮大な世界観に見合う、“自分、そして他者”が交流し、その交流によって変容していく大きな世界を描いて欲しかったなあと思うところです。
監督は「ジュブナイル・アニメーションでありたい」との希望をもってこの作品を作ったとか。
であれば、なおさら。
異世界でないとできない心の冒険、心の成長を主人公にはして欲しかったなぁ。。。
『星を追う子ども』(116分/日本/2011年)
公開:2011年5月7日
配給:メディアファクトリー/コミックス・ウェーブ・フィルム
劇場:シネマサンシャイン池袋、新宿バルト9ほか全国にて
原作・監督・脚本:新海誠
作画監督・キャラクターデザイン:西村貴世
美術:丹治匠
音楽:天門
声の出演:金元寿子/入野自由/井上和彦/島本須美/日高里菜/竹内順子/折笠富美子
公式HP:http://www.hoshi-o-kodomo.jp/
売り上げランキング: 710
売り上げランキング: 903
売り上げランキング: 222
マリン・エンタテインメント (2011-05-07)
売り上げランキング: 26538
講談社
売り上げランキング: 8735
売り上げランキング: 1001
売り上げランキング: 5417
売り上げランキング: 4144