【映画レビュー】星の子
芦田愛菜5年ぶりの主演映画『星の子』は、両親から愛され、両親を愛している中学校3年生の少女の物語。
自分は両親が大好きだし、それが普通だと思っているけれど、世間から見れば両親は“あやしい宗教”を信じるちょっと変な人たち……。
自分の信じている人、つまり家族の“小さな世界”と世間の“大きな世界”、“家族の信仰”と“教団の人たちの世界”。重なっているようで少しずつずれている、似ているようでまったく違うそれぞれの世界の乖離と隔絶に葛藤する少女を、芦田愛菜が素晴らしい演技力で表現しています。
彼女が大きな目を見開き、ただ見つめている世界は、どのように見えているのでしょうか……。
<STORY>
林家の次女・ちひろは、赤ちゃんの頃から病弱だった。ちひろの健康を願った両親は、知り合いから薦められた宗教に入信する。やがてちひろは健康となり、喜んだ両親は信仰を深くする。緑のジャージを着て、妙な儀式をしている両親の姿は世間から奇妙な目で見られ、長女のまーちゃんはそんな両親を嫌って家出してしまう。中学3年生になったちひろは、イケメン数学教師の南先生に恋をし、ノートに彼の似顔絵をたくさん書いていたのだが…。
<解説>
第157回芥川賞候補作となり、第39回野間文芸新人賞を受賞した今村夏子の同名小説を大森立嗣監督が映画化した本作。
子どもにとって、家庭というのはある意味一つの世界。そこでの価値観は絶対です。
でも、成長するにしたがって、他の家庭や、学校、地域社会という“世間”と接するようになり、自分がこれまで生きてきた“世界”と“普通の世界”との違いを知るようになります。
世間から見れば効果があるかもわからない水「金星のめぐみ」を高額な値段で購入し、緑のジャージを着てその水にひたしたタオルを頭に乗せる儀式をしている両親。世間にとっては異様な光景でも、ちひろにとっては、それはありふれた景色でした。
自分にとっては大好きな両親も、世間にとっては“妙な儀式をしている妙な人たち”。
自分にとっていつも飲んでいるペットボトルの水も、世間から見れば“あやしい水”。でも、この水を飲み続けていることで、ちひろは本当に風邪をひかないのです。
しかし、姉のまーちゃんはこの宗教や、宗教に傾倒していく両親を拒否し、家出したまま戻ってきません。
親戚の雄三おじさんはそんな両親の元で暮らすちひろを心配し、自分の家に引き取ろうとします。
まーちゃんやおじさんにとっては、林家の経済を圧迫している「金星のめぐみ」は、林家を不当に搾取する悪い宗教なのです。
でもちひろは、「金星のめぐみ」を、拒絶もせず、盲信もせず、ただ受け入れています。
それはきっと、両親がその宗教を心から信じているからでしょう。
両親は自分のためにその宗教を信じるようになった。そんな両親が信じているものだから、それは悪いものではないはずだ、と……。
物心ついた時から「金星のめぐみ」が家にあるちひろにとって、信心のせいで家が貧乏になっていっているという感覚もないのです。
ちひろはただ両親の宗教を受け入れていたのですが、初恋を経験することによって、両親の存在を恥ずかしく、少し疎ましく思うようにもなっていきます。
そしてちひろは、その教団が実施している研修旅行に参加します。
そこで、その宗教に自分なりのスタンスで接している老若男女と接し、両親と離れて時を過ごすことになります。
両親を探してもなかなか会えず、すれ違いが続くなかで、家族と一緒にいることについて、改めて考えるようになるのです。
自分にとって重要なものは何か。
両親が大切に思っているものは何か。
満天の星の下で、彼女たちは答えを見つけることはできたのでしょうか。
ちひろは、ただその大きな瞳で、星空を見つめていました。
『星の子』(110分/日本/2020年)
公開:2020年10月9日
配給:東京テアトル、ヨアケ
劇場:全国にて
原作:今村夏子
監督・脚本:大森立嗣
音楽:世武裕子
出演:芦田愛菜/岡田将生/大友康平/高良健吾/黒木華/蒔田彩珠/粟野咲莉/新音/池谷のぶえ/池内万作/宇野祥平/見上愛/赤澤巴菜乃/田村飛呂人/大谷麻衣/永瀬正敏/原田知世
Official Website:https://hoshi-no-ko.jp/
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