永遠の0
この映画『永遠の0』の主人公は三浦春馬演じる2004年に生きる若者・佐伯健太郎ですが、影の主人公は岡田准一演じる彼の祖父・宮部久蔵です。
この作品が、私は“自分のために自分の意志で”戦う人が好きなんだなあと実感させてくれました。
この作品に登場する宮部久蔵は、“お国のため”ではなく、“自分の家族のため”、“自分の家族の未来の幸せのため”、“日本の未来の幸せのため”に、自分の行動を決定していきます。
“お国のため”、“お家のため”、“殿のため”といった盲信による自己犠牲の精神を美化することは好きではないので、これまでは最近の日本の戦争映画にあんまり食指が動きませんでした。
しかし、盲信ではなく、葛藤の上で自分の意志で道を選ぶ主人公の姿を美化し過ぎずに見せてくれるこの作品は、2014年というこの時代に、戦争で戦った人びとのことを教えてくれる、意義のある作品だと思います。
<STORY>
祖母の葬儀に出席した司法浪人の佐伯健太郎は、祖母に戦死した夫がいたことを知る。自分の本当の祖父にあたるその男性・宮部久蔵のことを知りたいと、健太郎と姉は彼のことを調べ始めた。「奴は海軍一の臆病者だ」という久蔵のかつての戦友の言葉に健太郎はショックを受ける。海軍の戦闘機乗りだった久蔵は死を恐れ、乱戦時も戦闘を避けていたと言う。久蔵は「妻と娘のために、なんとしても日本に生きて帰る」と言っていたと言うが…。
<Cheeseの解説>
戦後60年を経た2004年、祖父のことを知らずに育った孫が、祖父の戦友を訪ね歩き、特攻で戦死した祖父のことを調べていく様子を描いた本作。
百田尚樹原作の同名小説を「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどで知られる山崎貴が監督を務めています。
2004年と1940年代という二つの時代を交錯させながら、様々な人にインタビューを重ねて行くことで、祖父の人物像を浮かび上がらせていきます。
海軍で、一流の腕を持つ戦闘機乗りとして生きていた宮部久蔵は、「妻と娘のために、必ず生きて帰る」と明言していた男でした。
すごい技術を持ちながら、生きて帰るために戦闘を避ける宮部久蔵は、ある一面では確かに“海軍一の臆病者”と言われてもしょうがない部分もあります。
しかし、彼がなぜ「必ず生きて帰る」と思い、どのようにこの戦争の時代と、戦争が終わった後の時代のことをどのように考えていたか、彼は何も言わなかったけれど、それは彼の周りにいた人に伝わっていたのです。
孫の健太郎は、久蔵の戦争時の仲間たちを訪ね歩き、様々な角度から、彼がどのような人物だったか、詳しく知るようになるのです。
周囲に流されがちな気の弱い兵士を演じた濱田岳、命知らずで無頼の好戦派を演じた新井浩文、真面目で一心な兵士を演じる染谷将太らの描写からも、“日本兵”“特攻兵”とひとくくりにされてステレオタイプに描かれがちな兵士たちにも様々なタイプ、様々な考え方の持ち主がいて、それぞれに様々な思いを持って生きていたことを教えてくれます。
そして、様々な出会いや思い、そして偶然が重なりあって、一人一人の人生が成立している、という当たり前ではあるけれども忘れがちなことを実感させてくれました。
大きなスケールで零戦や空母赤城などをリアルに再現しつつ、素晴らしい人間ドラマを描いているこの作品、まさに、山崎貴監督の代表作となるにふさわしい一作だと思います。
『永遠の0』(144分/日本/2013年)
公開:2013年12月21日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:百田尚樹
監督・脚本・VFX:山崎貴
脚本:林民夫
音楽:佐藤直紀
主題歌:サザンオールスターズ
出演:岡田准一/三浦春馬/井上真央/濱田岳/新井浩文/染谷将太/三浦貴大/上田竜也/吹石一恵/田中泯/山本學/風吹ジュン/平幹二朗/橋爪功/夏八木勲/佐々木一平/青木健/遠藤雄弥/栩原楽人
公式HP:http://www.eienno-zero.jp/
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