【映画レビュー】コーダ あいのうた / Coda
この作品のタイトルともなっているコーダとは、ろう者の親を持つ聴者の子どものこと。
Children of Deaf Adultsの頭文字から、CODAと呼ばれます。
このコーダの女子高生を主人公にした映画『コーダ あいのうた』は、コーダの葛藤と自分の夢に対する思い、そして家族との愛を描いた映画です。
子どもでありながら、家族のために通訳を務めたり交渉の窓口になったりするコーダは、いわゆるヤングケアラーでもあります。
家族の一員として、もちろん家族を支えたいとは思っているけれど、だからと言って自分の夢を捨てることはできない……。そんな気持ちが痛いほどに伝わってきて、思わず号泣してしまったのでした。
STORY
海辺の街で暮らす高校生のルビーは、「コーダ」。耳の不自由な両親から生まれた、家族の中で唯一の健聴者だ。漁師である父と兄の漁に付き合って値段の交渉をしたり、家族の耳や口として働いている。憧れのクラスメイト、マイルズの入った合唱部に入部したルビーは顧問の先生から歌の才能を認められ、音楽大学への進学を勧められる。ルビーはマイルズと共にレッスンを受け、音大への進学を夢見るようになるが、家族は彼女を引き止めようとしていた……。
解説
エリック・ラルティゴ監督による2016年のフランス映画『エール!』をリメイクしたアメリカ=フランス=カナダ合作の映画『コーダ あいのうた』。
主人公はアメリカの海辺の街に暮らす女子高生・ルビーです。
彼女は学校で合唱部に入ったことをきっかけに、歌の楽しさに目覚めます。そしてその才能を見出され、バークリー音楽大学への進学を勧められるのです。
これまで、この街で家族の手伝いをしながら過ごすことが自分の人生だと思っていたルビーにとって、その勧めは思いがけないものでした。
そこで彼女は自分の可能性に気づくのです。自分も他のみんなと同じように、夢を持って旅立ってもいいのだと。
しかし、ルビーの家族にとっては、それは大きな支えを失うこと。通訳者を失うことでもあるのです。
感情的な淋しさはもちろんありますが、それ以上に労働力を失い、経済的にも大きな損失になるのでした。
家族の一員としての自分と、夢を持って生きる若者としての自分。
ルビーの迷いはもちろんですが、家族にとっても大きな迷いがあります。
ルビーのサポートがなければ、手話通訳ができる人にお金を払って依頼するしかない。
でも、娘として夢を叶えてほしい。自分のできないことができる娘、自分のできないことで世界に羽ばたこうとしている娘に、自分たちのせいで翼を折って欲しくない……。
彼らの葛藤と、彼らの心情が感じらる演出が心を打ちました。
劇中でルビーが歌うタミー・テレルとマーヴィン・ゲイによる「You’re All I Need To Get By」やジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」、デヴィッド・ボウイの「スターマン」などの名曲も心に響きます。
「コーダ」(Children of Deaf Adults)の複雑な心境に丁寧に寄り添った、優しい映画でした。
※この作品は第94回アカデミー賞にて作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門でオスカーを受賞しました。
作品情報
『コーダ あいのうた』(112分/アメリカ=フランス=カナダ/2021年)
原題:Coda
公開:2022年1月21日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて
監督・脚本:シアン・ヘダー
音楽:マリウス・デ・ヴリーズ
出演:エミリア・ジョーンズ/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ/マーリー・マトリン/トロイ・コッツァー/ダニエル・デュラント/ジョン・フィオーレ/エウヘニオ・デルベス/エイミー・フォーサイス
Official Website:https://gaga.ne.jp/coda/
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