【映画レビュー】ブラックバード 家族が家族であるうちに / Blackbird
もし自分がその立場になったらどうするか……。
もし娘の立場になったら。もし母親の立場になったら。もし父親の立場になったら。もし親友の立場になったら。
葛藤するパートナーを側で見守る立場になったら。
そんなことを考えずにはいられないのが、この映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』です。
愛する人が下した“安楽死”という決断。その決断を葛藤しながら受け入れる家族の姿を、実力派の俳優たちが見事に表現しています。
STORY
夫のマイケルと息子のジョナサンとともに、両親が暮らす海辺近くの家を訪れたジェニファー。やがて妹のアナもパートナーのクリスとともに久しぶりに姿を見せる。やがて、母の長年の親友であるリズもやってくる。ALSを患った母のリリーとともに過ごす最後の週末なのだ。医師でもある父のポールは、体が動かなくなっていくリリーを献身的にサポートしていた。母・リリーの安楽死の決断に、彼らはそれぞれ複雑な思いを抱いていた……。
解説
『ノッティングヒルの恋人』、『恋とニュースの作り方』などで知られるロジャー・ミッチェルが、ビレ・アウグスト監督のデンマーク映画『サイレント・ハート』をリメイクした本作。
『サイレント・ハート』で脚本を手がけたクリスチャン・トープが、本作でも脚本を担当しています。
彼らが描くのは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気のため死を決意した一人の女性・リリーと、彼女を愛する家族と友人の姿です。
病に冒されたリリーをスーザン・サランドンが、そんな妻を黙って支える夫・ポールをサム・ニールが演じています。
そして、二人の娘のジェニファーとアナを演じるのはケイト・ウィンスレットとミア・ワシコウスカ。
実力派俳優が顔を揃え、葛藤する心を時に静かに、時に激しく表現しています。
「強くなれ」「自由に生きろ」と言いながら娘たちを育ててきた、強く自由な母・リリー。
そんな母を大好きだけれど、母ほど強くなれない自分に葛藤する次女・アナ。
強さはあるけれど、自我が強く他者をなかなか認められない長女・ジェニファー。
でも、母・リリーの自由さ、強さ、賢明さは娘たちの中に確実に息づいています。
それは彼女たちの愛する人、育てた子どもを見ればわかります。
おばあちゃんとの別れに、「詩を贈る」と言ってラップでリリックを披露するジェニファーの息子・ジョナサン。
アナとくっついたりを繰り返しならも、彼女を支え、かつ中立の立場で家族の問題を見守り冷静に意見するアナのノンバイナリーのパートナー・クリス。
「自分らしく生きろ」と言われて育ったジェニファーとアナの中に、ウッドストックにも参戦したという進歩的なリリーの魂は、確かに存在しているのです……。
ロジャー・ミッチェル監督は、静かに、でも熱く、人の尊厳と、家族の愛の一つのあり方と、世代を超えて引き継がれていく家族の魂の姿を描きだしてくれました。
作品情報
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』(97分/アメリカ=イギリス/2019年)
原題:Blackbird
公開:2021年6月11日
配給:プレシディオ、彩プロ
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
監督:ロジャー・ミッチェル
脚本:クリスチャン・トープ
原作:ビレ・アウグスト 『サイレント・ハート』
音楽:ピーター・グレッグソン
出演:スーザン・サランドン/ケイト・ウィンスレット/ミア・ワシコウスカ/サム・ニール/リンジー・ダンカン/レイン・ウィルソン/ベックス・テイラー=クラウス/アンソン・ブーン
Official Website:https://blackbird.ayapro.ne.jp/
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