ビッグ・アイズ / Big Eyes
1960年代にアメリカで人気を博したポップ・アート画家、マイケル&マーガレット・キーン夫妻の物語を描いたこの作品、『ビッグ・アイズ』。
ティム・バートン流のキュートな味付けや夫・マイケルを演じたクリストフ・ヴァルツのチャーミングさでなんとなく中和されていますが、実はとっても怖い作品です。
一見魅力的でカリスマもあり、人の心を巧みに操るサイコパスの底知れない恐ろしさ、この作品を観るとよくわかるのではないでしょうか。
個人的には、夫に心理的に支配される心理的ドメスティック・バイオレンス映画に思え、面白く観つつも、心が冷えるような恐ろしい思いで観ていました。。。
<STORY>
1958年、娘を連れて夫から逃げたマーガレットは、サンフランシスコで暮らし始める。美大を卒業した彼女は似顔絵を描き始めるが、そこでパリで絵を学んだと言うウォルター・キーンと出会う。二人は恋に落ち、すぐに結婚。ある日、ナイトクラブに飾っていたマーガレットの絵が大人気に。しかしウォルターはマーガレットの“ビッグ・アイズ”の絵を自分が描いたと発表しており、マーガレットは影武者として絵を描き続けることになる…。
<Cheeseの解説>
2014年に日本を賑わせたゴーストライター問題。
ある作曲家が作った曲を、別の作曲家が自分のものとして発表していたという問題ですが、本作『ビッグ・アイズ』はそれを思い起こさせる物語です。
主人公はエイミー・アダムス演じるマーガレット・キーン。
夫の支配から逃れて幼い娘を連れてサンフランシスコにやって来て、美大卒の経歴を活かして絵で生計を立てようとし、そこで日曜画家のウォルターと出会います。
人当たりが良くチャーミングで、人を喜ばせるサービス精神があるウォルターに、マーガレットはすぐに惹かれ、結婚してしまいます。
でも、人当たりの良さは口のうまさでもあり、サービス精神は人を従わせるための手練手管でもあるのです。
大きな瞳を持つ子どもたちを描くマーガレットの絵は、素人っぽく芸術ではないと評されがちでしたが、ウォルターは自分の絵と画廊に一緒に売り込もうとしてくれます。
自分の絵を認めてくれるウォルターは、その時のマーガレットには心強いパートナーだったことでしょう。
しかし、ある日ウォルターはマーガレットの絵を自分が描いたものとして、悪気なさげに人に売ってしまいます。
そしてそのままマーガレットの絵を自分のものとして発表し続け、マーガレットはなし崩し的にゴーストライターとして誰にも言えない秘密を抱えることになるのです。
そうやって、マーガレットは知らず知らずのうちに心まで支配され、ウォルターに従属してしまうのです。
決して悪びれることなく悪事を働き、人を思い通りに動かそうとするウォルターは、まさに一種のサイコパスと言えるでしょう。
また演じているクリストフ・ヴァルツがホントにチャーミングでね…。
ボーダーのロングTシャツとか着ちゃって画家を気取ったりしてしまうあたり、なんともキュートで、そのキュートさに、ごまかされてしまう女性は多いはず。
娘を抱えて最初の夫から逃げて、心が弱っている時についフラフラと口のうまい男に惹かれてしまう心理。
その口のうまい男が決して良い人物ではないと気付きながらも、自分をごまかしてその男を信じようとしてしまう心理。
ウォルターに対して友人から何かを言われても、それを肯定すると自分のこれまでを否定することにつながると、友人の心配を無視して、あえて孤立してしまう心理。
この『ビッグ・アイズ』、そんなサイコパスに従属してしまう女性の様子を、ポップで可愛い絵と言う甘いコーティングに包みつつ、しっかりと描いています。
そんな意味で、人間の怖さ、人間の弱さを描いた、本当に恐ろしい作品だと思うのでした。
ティム・バートン監督じゃなく、ウォルターをクリストフ・ヴァルツが演じていなければ、心理ホラーになっていたのではないでしょうか。。。
『ビッグ・アイズ』(106分/アメリカ/2014年)
原題:Big Eyes
公開:2015年1月23日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ 有楽座ほか全国にて順次公開
監督:ティム・バートン
脚本:スコット・アレクサンダー/ラリー・カラツェウスキー
音楽:ダニー・エルフマン
出演:エイミー・アダムス/クリストフ・ヴァルツ/クリステン・リッター/ジェイソン・シュワルツマン/テレンス・スタンプ/ダニー・ヒューストン/エリザベッタ・ファントン/ジョン・ポリト/ジェームズ・サイトウ
公式HP:http://bigeyes.gaga.ne.jp/
売り上げランキング: 159,386
売り上げランキング: 2,401
売り上げランキング: 21,404
売り上げランキング: 5,683
売り上げランキング: 20,500