【本】ぬるい毒 / 本谷有希子
この作品は、第33回野間文芸新人賞受賞作品。第24回三島由紀夫賞候補、第145回芥川賞候補ともなっています。
それなりに期待して読み始めたのですが…、なんだかちょっと期待外れな気も。
というか、個人的に、メンヘラ女性とか、コンプレックスの強い自意識過剰な人物ってどうもニガテなのですよね。
この主人公はまさにそこにあてはまる人物。
自分の思考に捕われて、自縄自縛で他人を否定しつまらない人生を送る主人公には、むしろ嫌悪感を感じてしまいました。。。
STORY
年末、実家から地元の短大に進学した熊田由理のところに、向伊という男から電話がかかってきた。高校時代に由理から借りたお金を返したいと言うのだ。由理には覚えがなかったが、向伊はわざわざ家までやって来る。その1年後、向伊からの電話で飲み会に呼び出された由理は、向伊の友人たちからもバカにされることに。東京の大学に行っている向伊は、帰省するたびに連絡してくるようになる。そんな向伊に復讐するため、由理は向伊に会い続ける…。
感想
この物語の主人公・熊田由理は、少し込み入った事情のある家に産まれた一人娘。
とはいえ、実家とその土地があるだけで、お金持ちというわけでもありません。
しかし、婿を取ることを義務づけられ、実家から出て行くことができない環境のようです。
外見も、もとは悪くないものの、高校時代はイケてなかったらしいです。
高校を卒業し、短大に入って垢抜けはしたものの、男にこびる雰囲気を漂わせてもいるらしく。
性格的にもどこか卑屈で、多分人をいらつかせるような雰囲気を身に着けているのでしょう。
そんな彼女が向伊という“中には何もないけれど、外見だけはいい”という男に目をつけられ、精神的にも肉体的にも金銭的にも搾取されていきます。
由理は自分が騙されて搾取されていることを自覚しつつ、向伊に「自分が騙されているとわかっていない」フリをして、そのことで「私はあえて騙されていることで、逆に向伊を騙している」と考えて自己防衛をしています。
そんな彼女は、向伊の友人に「なんか、浅そうですね」と言われておののきます。
そして向伊とその友人たちに「ぬるい」ということで復讐しようとするのです。
まあ、傍から見えれば、向伊もその友人も、そして当の由理も、浅いし、ぬるい。
何の責任もない中で、「自分は本当はすごい人間なんだ」と勘違いして生きているに過ぎない気がします。
私は主人公の由理の弱さや卑屈さがどうにも好きにはなれませんでした。
そんな卑屈な主人公は、別に現代的というわけでもないし、新しくもないと思います。
こういう一見斬新に見えるメンヘラ系キャラクターは、正直もう飽きました。。。
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