【映画レビュー】ナイト・トーキョー・デイ / Mapa De Los Sonidos De Tokio
のっけから女体盛りのシーンで始まる映画『ナイト・トーキョー・デイ』。
スペインのイザベル・コイシェ監督が菊地凛子を主演に迎え、東京の街を舞台にしたスペイン映画です。
築地市場、ラブホテル、ネオン、花屋敷、音をたててすするラーメン、音姫のあるトイレなどなど、“外国人が見たエキゾチック・ジャパン”的な風景が次々に展開される本作。
あくまでもスペイン映画で、脚本もイザベル・コイシェが担当し、撮影、編集、録音、製作等もスペインの人たちが担当されているよう。
なので、当たり前と言えば当たり前なのですが、やはり日本人の感覚で見ると違和感が残ります。
日本なのに、日本ではない。
骨格は西洋人なんだけど、顔と体つきは日本人、というような、不思議な雰囲気の作品です。
でも、菊地凛子はこういう映画がハマるなあ。。。
日本のドラマなどに出ていると、なんだかしっくりこないというか、ちょっと収まりが悪い感じがして、そんなに美人とも思えない彼女。
でも、この作品の中の彼女は本当に美しく、抜群の存在感がありました。
そう考えると、彼女は“外国人の骨格を持つ”日本人女優なのかもしれないですね。
<STORY>
築地の魚市場で夜から明け方まで働く女・リュウ。人との関わりを嫌う彼女に興味を持った録音技師は、たまに彼女と会って、彼女の声を録音するのを楽しみにしていた。ある日、リュウは石田という男から、スペイン人男性・ダビの暗殺を依頼される。リュウには殺し屋という裏の顔があったのだ。ワイン店を営むダビに近づいたリュウは、一瞬で彼に惹かれていく。そして二人は、電車の車内を模したラブホテルで逢瀬を重ねていく…。
<解説>
この作品の英題は『MAP OF THE SOUNDS OF TOKYO』。“東京の音の地図”です。
なので、普通の映画には収録されていないような、様々な町の音がノイジーに収録されています。
川の流れる音であったり、築地市場でホースで魚の血を洗い流す水音であったり、雨音であったり、「ラーメンおいしいよ」、「箱根行こうよ」「でも箱根はちょっと遠くない?」というような街の人々の会話であったり、コツコツひびく足音であったり。
田中泯の演じる男の仕事が「録音技師」というのも象徴的です。
“東京の音の地図”とは、彼が録音した“世界”を集めたものなのかもしれません。
リュウに執着し、彼女の他の男性との逢瀬の会話を盗み聞く彼の様子は、なんだか「鍵」などの谷崎潤一郎作品を思わせます。
奔放な若い娘に焦がれ、彼女の動向を盗み見(聞き)する男。
彼女が危機的状況に巻き込まれていっても、録音技師は何もしません。できないのかもしれません。
後から彼女と出かけたことのある墓地へ行き、彼女と一緒に聞いた音を聞き、彼女の想い出を語るだけなのです。
結局、リュウという女の正体は謎のまま。
なぜ殺し屋なのか、本名は何なのか、なぜダビを愛してしまったのか。
リュウが語らなかったことは、録音技師のテープには録音されません。
音の地図は、空白のまま放置され、その空白は、観客の想像で埋めるしかないのでした。
そういえば、この作品なのですが、実はあの押尾学も出演していた模様。
2009年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に出品した際には、彼の出演もアナウンスされていました。
ワイン店店員の役で、そんなに大きな役ではなかったみたいですが、普通に作品を観ている限り、彼の存在には気付きませんでした。
日本公開にあたり彼の出演シーンをカットしたのでしょうか。
それとも、もともとチラッとしか映らないくらいの小さな約だったのか?
彼が出演していることを、試写で観た後で知ったので、エンドクレジットとかもチェックできなかった…。
今後、この作品を観る方には、ぜひともチェックしてみていただければと思います。
『ナイト・トーキョー・デイ』(98分/スペイン/2009年)
原題:Mapa De Los Sonidos De Tokio
英題:Map of the Sounds of Tokyo
公開:2010年9月11日
配給:ディンゴ
劇場:新宿武蔵野館ほか全国にて
監督・脚本:イザベル・コイシェ
出演:菊地凛子/セルジ・ロペス/田中泯/中原丈雄/榊英雄
公式HP:http://www.night-tokyo-day.jp/
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