【映画レビュー】おおかみこどもの雨と雪
『時をかける少女』、『サマーウォーズ』の細田守監督がオリジナル脚本で手がけた新作映画『おおかみこどもの雨と雪』。
一人の若い女性が“母親”として成長していく姿と、子どもたちの“巣立ち”の様子を美しい自然の中で描いています。
細田護監督の、母親となる女性への“敬愛”、外界との接触を重ねて大人になり親離れをしていく子どもたちへの“エール”を感じさせる一作です。
でも、本作の中での“父親”や“男性”の存在感のなさというか、役に立たなさは逆に特筆ものかも。
日本型子育ての“母と子”の間の絆の強さに、男性が抱く疎外感が現れているのかもしれません。
STORY
大学生の花は、ある男性と恋に落ちる。しかし、彼の正体は“おおかみおとこ”だった。彼の正体を知っても愛し続けた花は、おおかみおとことの間に、娘・雪と息子・雨を産む。しかし、雨が生まれて間もなくおおかみおとこは命を落としてしまう…。花は一人で雪と雨を育てることを決意し、山奥に引っ越す。自然の中で、試行錯誤しながら野菜を育て、ひっそりと暮らす花たち。やがて子どもたちも成長していき、それぞれに変化が訪れる…。
解説
夫を早々に亡くし、助けてくれる親もいない状態で“おおかみこども”を育てることとなった花。
人との交流を断ち、自然いっぱいの山の中で手探りでこどもたちを育てていきます。
人間になったりおおかみになったり、自由自在に姿を変えて、自然の中で生き生きと駆け回るこどもたち。
生命力あふれるおおかみこどもたちの可愛さは特筆もので、もう、思わずギューッと抱きしめたくなります。
その分、言うことを聞かない憎たらしさもあるのですが…。
花はそんな子どもたちに振り回されながら、地元に溶け込み、暮らしを確立していくのです。
でもやがて、子どもたちは学校に行き始め、外の世界との交流を持つようになるのです。
こどもたちが他者と交わることで、自分たちが人と違うことに気付き、自我に目覚め、やがて母と子の蜜月は終わりを迎えます。。。
この『おおかみこどもの雨と雪』では、“おおかみこども”という特殊な状況を描いているものの、物語は、すべての母親が経験する“こどもとの別れ”を描いています。
子育てを経験した母親にとっては、花の心情が痛いようにわかるのではないでしょうか。
個人的には、おおかみこどもの幼少期の声を演じる大野百花ちゃんと加部亜門くんの上手さに、大感動してしまいました。
いばりんぼうで活発な姉・雪のガチャガチャした声と、か弱く気弱な弟・雨のかぼそい声を思い出すだけで、なんだか今でも泣けてきます。。。
別コラム
作品情報
『おおかみこどもの雨と雪』(117分/日本/2011年)
公開:2012年7月21日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作・脚本・監督:細田守
脚本:奥寺佐渡子
キャラクター・デザイン:貞本義行
作画監督:山下高明
美術監督:大野広司
声の出演:宮崎あおい/大沢たかお/黒木華/西井幸人/大野百花/加部亜門/上白石萌音
公式HP:http://www.ookamikodomo.jp/
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