風に立つライオン
「さだまさしの原作を、大沢たかお主演で映画化かあ。なるほどね…」
と、それくらいの前情報で観に行った映画『風に立つライオン』。
エンドクレジットで「監督:三池崇史」という文字を見た時、心の底から驚きました。
「三池監督…。こんなヒューマン・ドラマをあの人が撮るなんて…。いやでも、確かにあの方は来たお話はなんでも断らないことで有名な監督だった…。どんな題材でも、しっかりとテーマを捉えた作品を作り上げる手腕、さすがね…」
ヤクザから時代劇からミュージカルからアニメの実写化まで、なんでもこなす多作の職人監督、三池崇史。
この映画『風に立つライオン』でも、しっかりとその手腕を見せ付けてくれます。
<STORY>
1987年、島田航一郎はケニアにある長崎大学熱帯医学研究所に赴任し、さらにロキチョキオにある赤十字戦傷病院へ派遣される。そこで航一郎が出会ったのは、スーダンの内戦で負傷した少年兵たちだった。航一郎はそこで出会ったンドゥングという絵のうまい少年を気にかけていた。ケニアへ赴任する前、航一郎には貴子という同期の医師と付き合っていた。彼女は、長崎の五島列島にある父親の診療所を継ぐため、航一郎と離れ日本に残ることを決める。
<解説>
この映画はさだまさしが1987年に発表した曲「風に立つライオン」に惚れ込んだ俳優の大沢たかおが、さだに働きかけて小説化・映画化された物語です。
1971〜73年の間、ケニアにある長崎大学熱帯医学研究所に所属し、現地で医療活動に従事していた医師・柴田紘一郎の体験にインスパイアされたさだまさしが、1987年に「風に立つライオン」を発表したのです。
さだまさしが、この曲のモデルとなる医師・柴田紘一郎氏に出会ったのは、1973年。
その出会いが、1987年にひとつの曲となり、そして2013年にさだまさしの手で小説になりました。
そして、2015年、さだと柴田氏の出会いから約40年の時を経て、この映画『風に立つライオン』が出来上がったのです。
この映画は、1987年と2011年、二つの時代が舞台になっています。
島田航一郎が派遣されている、1987年、第二次スーダン内戦まっただ中のアフリカ。
そして、2011年の東日本大震災後の日本です。
アフリカの大地で、医療に従事して人びとを助けていた柴田紘一郎という一人の医師の経験が、人びとの心に小さな種を蒔き、「風に立つライオン」という曲の花を咲かせ、さらに島田航一郎という主人公の登場する小説、映画という形で結実しました。
この映画も、この「風に立つライオン」の物語が経てきた過程と同じように、ひとつの種が、アフリカ、そして日本の地で大きな実を育てていきます。
一人の医師の想いが、アフリカの子どもたちを救い、彼らに将来のビジョンを与えました。
その医師の想いは、日本に残してきた恋人にも伝わり、僻地での地域医療に身を捧げる助けとなるのです。
この映画「風に立つライオン」を観た人は、外見は違っても、アフリカも日本も、人間が人を想う心は変わらないことに気付くでしょう。
医師はけが人や病人、子どもやお年寄りを心配し、助けようとする。
医師に助けられた子どもや老人は、医師に感謝し、彼らに何かあった時には自分のできる形で恩返ししていく。
まさに“命のバトン”というテーマがふさわしい物語です。
三池崇史監督は、そんな人間の物語を、ケニアに一ヶ月滞在して現地ロケを行い、まっとうに描き出してみせました。
ケニアで負傷した少年兵を演じるのは、現地のスラムで暮らす少年たちだそう。
演技ではない素の反応で、人間の持つ“強さ”や“明るさ”を感じさせてくれます。
彼らと共に過ごしているシーンの大沢たかお、石原さとみらの表情もとても明るく、パワーにあふれています。
こんなにパワーの満ちた顔ができる人たちは、やはり幸せなのだろうと思います。
それにしても『藁の楯 わらのたて』で狂気の殺人犯に挑む刑事の姿を描いた大沢たかお×三池崇史コンビが、こんなヒューマニズムあふれる作品も撮ってしまうとは…、人間の振り幅って本当にすごいですね。。。
『風に立つライオン』(139分/日本/2015年)
公開:2015年3月14日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:さだまさし
監督:三池崇史
脚本:斉藤ひろし
音楽:遠藤浩二
出演:大沢たかお/石原さとみ/真木よう子/萩原聖人/鈴木亮平/藤谷文子/山崎一/石橋蓮司/中村久美/ERICK OJIAMBOH/PATRICK OKETCH/NICK REDING/LYDIA GITACHU
Official Website:http://kaze-lion.com/
バップ (2015-03-11)
売り上げランキング: 38,058
フォア・レコード (2003-01-22)
売り上げランキング: 1,240
売り上げランキング: 45,554