【映画レビュー】世宗大王 星を追う者たち / 천문:하늘에 묻는다
韓国の1万ウォン札などでも知られる世宗大王が主人公だということで、骨太な歴史作品かと思って観に行った映画『世宗大王 星を追う者たち』。
ふたを開けてみたら、なんとびっくり、ハン・ソッキュとチェ・ミンシクが命と朝鮮の夢をかけたプラトニックな愛で結ばれる、おっさんずラブな物語でした。
資料を見てみたら『四月の雪』のホ・ジノ監督作なのですね。それを知った時、なるほどー、と納得できたのでした。
<STORY>
李氏朝鮮第四代・世宗(セジョン)の世。朝鮮は明国の支配下にあった。世宗は類稀な能力を持つ奴婢のチャン・ヨンシルを抜擢。ヨンシルは豊富な科学知識と用い、「天体観測機器」を発明していく。世宗はそんなヨンシルを信頼し、ヨンシルも世宗に心酔し、世宗の信頼に応えてきた。しかし明国は朝鮮独自の発展を認めず、「天体観測機器」を破壊しヨンシルを投獄させる。その頃、ヨンシルが製作した世宗の輿が壊れるという事件が起こる…。
<解説>
1418年に李氏朝鮮第四代の王となった世宗。
朝鮮特有の文字であるハングル(訓民正音)を創製したことで知られる名君です。
彼の人生は映画『私は王である!』や、「大王世宗」、「根の深い木」などの多くのドラマでも描かれており、国内外の多くの人がその功を知る人物と言えます。
この世宗の下で科学器具の製作にあたったのが、チャン・ヨンシル。
奴婢の身分だったものの、その才能を世宗に認められ、武官に取り立てられたという当時の天才科学者です。
世宗の指揮のもとに、簡儀(カニ)と呼ばれる天体観測器具や自撃漏(チャギョンヌ)と呼ばれる水時計を作り、上護軍(サンホグン)という地位にまで上り詰めた人物です。
彼の人生も、「チャン・ヨンシル 〜朝鮮伝説の科学者〜」というドラマで描かれています。
本作『世宗大王 星を追う者たち』は、世宗の時代に起こったいくつかの事実をもとに、ホ・ジノ監督が独自の解釈で作り上げた歴史物語。
韓国で多くの人が知る世宗とチャン・ヨンシルの関係を、新たな側面から描き出しています。
王として君臨する世宗は、明に冊封されていた朝鮮を真の独立国家にしたいと願っていました。そのために、独自の暦を作ったり、独自の文字(訓民正音)を作ろうとするのです。
しかし、領議政(ヨンイジョン)や大司憲(テサホン)ら反対勢力は、「子が父に従うように、朝鮮は明に従うべき」と、世宗の施策に反対するのです。
最高位にありながら、世宗は孤独だったのです。
そんな世宗にとって、チャン・ヨンシルは唯一、自分の夢や希望を話すことができ、その夢を託すことができる者でした。
世宗はチャン・ヨンシルを側に呼び、共に夜空に輝く星を眺めながら、夢を語ったのです。
チャン・ヨンシルはそんな世宗に尊敬と感謝、そして信頼の情を感じます。
自分の才を認めてくれて、身分を超えて自分を優遇してくれた…。そんな世宗に、返しても返しきれない恩義と感謝を感じているのです。
チェ・ミンシク演じるチャン・ヨンシルは、はにかむような上目遣いで世宗を見つめます。
そして、世宗の夢を実現するため、自ら汚れ役として大見得を切ってみせるのです……。
明国使節たちの集まる宴会の場では、堂々と放尿してしまうようなキャラでありながら、世宗の前では恋する乙女。このチェ・ミンシクの演技の振り幅に、さすがだなあと感じ入りました。
たとえその感情が尊敬であったとしても、極まれば愛情の域に達するのかもしれません。チェ・ミンシクはその熱い想いを、繊細かつキュートに見せてくれました。
恋愛映画の名手であるホ・ジノ監督がつくると、けっこう物騒に伝わっている輿破損事件のエピソードも、とてもロマンチックになるものです。
これぞ作家性…、韓国人監督が持つ、強い個性を感じることができました。
『世宗大王 星を追う者たち』(133分/韓国/2019年)
原題:천문:하늘에 묻는다
英題:Forbidden Dream
公開:2020年9月4日
配給:ハーク
劇場:シネマート新宿ほか全国にて順次公開
監督:ホ・ジノ
脚本:チョン・ボムシク/イ・ジミン
音楽:チョ・ソンウ
出演:ハン・ソッキュ/チェ・ミンシク/シン・グ/キム・ホンパ/ホ・ジュノ/キム・テウ/パク・ソンフン/キム・ウォネ/イム・ウォニ/ユン・ジェムン/オ・グァンロク/チョン・ヨビン
Official Website:http://hark3.com/sejong/
ポニーキャニオン (2013-11-02T00:00:01Z)
¥14,630
メディアファクトリー (2012-07-12)
¥22,671 (中古品)
ポニーキャニオン (2016-03-16T00:00:01Z)
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2017-09-21T00:00:01Z)
¥4,404
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2007-03-08T00:00:01Z)
¥910 (中古品)
彩流社 (2012-02-23T00:00:01Z)
¥1,980
仮説社 (2007-08-15T00:00:01Z)
¥1,980