【映画レビュー】僕達急行 A列車で行こう
私自身は鉄道好きでもないけれど、なんとなく観ていてうれしくなってしまった映画『僕達急行 A列車で行こう』。
この作品、タイトルからもわかるとおり、鉄道オタクの青年二人の映画なわけですが、実は鉄道オタクのためだけの映画ではありません。
この作品を観ていて感じたのは、監督の“鉄道愛”と共に、ふかーい“映画愛”。
森田芳光が持っていた映画への愛と、古い日本映画への憧れ、あえて実験的な作風に挑もうとするチャレンジ精神に、ちょっと胸が熱くなる一作です。
STORY
大手不動産企業に務める小町圭は、電車の中で小玉健太と知り合う。鉄道好き、女性の気持ちがわからないという共通点を持つ二人はすぐに意気投合。小玉は町の鉄工所の跡取り息子で、マンションを出ることとなった小町は小玉の鉄工所の寮に住むことに。やがて小町は九州に転勤となって引っ越し、小玉は青春18きっぷで小町のもとに遊びに行く。そして、九州の鉄道名所を巡っている時に、HOゲージ好きの筑後雅也という男性と知り合う…。
解説
合計20路線80モデルの様々な電車と、線路脇の様々な風景が登場するこの作品、東京在住や九州近郊在住の方なら、どこかで見かけた風景が登場し、うれしくなることも多いはず。
私は京急電車や東急池上線の石川台駅の風景などに、ちょっとうれしくなりました。
そして、もうひとつうれしくさせてくれたのは、森田芳光監督の映画愛です。
恥ずかしながら、不勉強で昔の映画をそんなに観ているわけではないのですが、様々な昭和の日本映画のエッセンスをこの作品からは感じました。
恋の駆け引き途中の松山ケンイチと貫地谷しほりのやりとりは、日活の青春映画を感じるし、松山ケンイチが務める不動産企業の社長・松坂慶子と専務・西岡徳馬のコミカルなやりとりなどは、東宝の社長シリーズを感じます。
村川絵梨や松平千里といった女優陣のちょっと古くさい衣装やヘアメイクも、昭和っぽさを助長していますね。
さらには、二者の対話中に、話者の顔だけをアップにし話している顔のアップのカットをつなげていくカット割りや、一つのカメラを反対側にいる話者にパンして、一つのカットに一つのカメラで二者の対話をつなげていくカットなどからも、古い日本映画への尊敬の念を感じることができました。
森田芳光監督の“鉄道愛”、“映画愛”を感じられるこの作品、たっぷりの“愛”を感じることのできる愛にあふれた一作だと思います。
2011年12月の森田芳光監督の急逝が、惜しまれます。
この作品は、森田監督が“映画”に贈る最後のラブレターなのかもしれません。
作品情報
『僕達急行 A列車で行こう』(117分/日本/2011年)
公開:2012年3月24日
配給:東映
劇場:全国にて
監督・脚本:森田芳光
出演:松山ケンイチ/瑛太/貫地谷しほり/村川絵梨/ピエール瀧/伊武雅刀/伊東ゆかり/星野知子/笹野高史/西岡徳馬/松坂慶子/菅原大吉/三上市朗/松平千里/鈴木亮平
公式HP:http://boku9.jp/
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